リア充、爆発しろ!
この世は残酷だ。誰かが幸せになれば、必ず誰かが不幸になる。みんな平等に幸せにはなれない。そうして成り立つ世界だ。
彼女達の為にも私は、公斗の事を大切にして行こうと改めて決意を固めながら、首を長くして用を足して戻ってくる私を待っている彼のところへと向かった。
「お待たせ~♪」
何でもない風に私は公斗のところへと笑顔で戻った。
「遅かったな。大きい方か?それとも生理か?」
「サイッテー!本当にデリバリーの欠片も無いわね」
「ふふ、冗談だ。だから“デリカシー”だと言っているだろ」
全く、今あんたのせいで酷い目にあってたんだから、もっと労いなさいよね!なんて言えないけど、何かいつも通りの公斗がそこにいて内心ホッとしてる。
友達に紹介してもらうと言うイベントは発生しなかった代わりに、公斗の想い人三人にリンチされると言う楽しくも何ともないイベントが発生すると言うアクシデントに出くわすなんて思いもしなかったわよ。
「はいはい。そんな事より私、お腹すいちゃった!今度は外行こ?出店みたい!」
「ったく、仕方ないな」
公斗ガールズとの一悶着を終えた私は、昼時と言う事もありホッと一安心すると一気にお腹がすいたことに気がついた。
これ以上ここにいるのも空気が悪いし、外に出たいと思ったから出店で何か食べる事を提案する。
同意してくれた公斗と再び人の多い外という名の戦場に出ることもあって、ハグれないようにと又手を繋いで出店へと向かった。
「ん~、おいっしいーーよっ」
行列からやっとの思いで買ったたこ焼き、焼きそば、広島焼きを二人で食べる。
「大食いだな」
「悪い?」
「いや」
食べながら、次はどこに行くか相談する。
さっきの事もあって私は余計に学祭を楽しみたいと言う気持ちが増していた。
「ミスコンあるじゃん!」
最初に公斗から奪い取ったパンフレットを見ながら私は“ミスコンテスト”と言う文字に踊った。
ちょうどこの後すぐの催しだ。出たいと思った。
「出るなよ!」
「何でよ?」
出る気満々だったのに、何故だか杭を刺される。
「と言うかお前は出られん。ミスコンとミスターコンテストは在校生限定で、推薦制だ。もう予め出る奴は決まっている。だから我慢しろ。お前には資格そのものがない」
「ちぇー、なあんだ。出たかったのになぁ……」
一般が参加出来るならしたかったけど、そうだよね。在校生のステータスだもん。
それに私が出たら、絶対優勝しちゃうし、目立っちゃいけないわよね。
それよりも私はアイドルのオーディションに受からなきゃ!こんな所で運を使ってる場合じゃないもんね。
「美奈子は俺だけのミスコンだからな」
「何それ、キザ過ぎない?」
公斗の言葉に咄嗟にそう答えたけど、内心は嬉しくて照れ隠しだった。
「でも、せっかくだからミス&ミスターコンテストも見たい!」
「見るだけなら、良いぞ」
午後からはステージでの催しを楽しんだ。
楽しい時間はすぐに過ぎてしまい、あっという間に学祭が終わる時間になってしまった。
「今日はありがとう。楽しかった」
「そうか、誘って良かった」
これは本音。本当に楽しかった。
大学の学祭は初めてで兎に角何もかもが目新しくて楽しめた。
公斗ガールズにリンチされたのだけが、本当に残念で最悪だった。
暴露してやっても良かったけど、これは私の心の中にだけ閉まっておくことにした。公斗に言っても仕方ないし、彼女達の事も分からなくは無い。
だけど、やっぱり告げ口する事で同じレベルに成り下がりたくはなかったから。
「公斗の大学も見られたし、大学もいいなって羨ましくなった」
「アイドル目指しながら大学にも通うか?」
「それは辞めとくわ。二兎追うものは一都六県って言うもの」
「それを言うなら“二兎追うものは一兎も得ず”だ。まぁ、その方がいいかもな。諺も英語も間違えまくっているからな」
「もう、公斗の意地悪!」
こうして私は色んな意味で忘れられない大学祭を終えた。
おわり
20231103 文化の日