リア充、爆発しろ!


無事用を足し終えて個室から出てきた私は、そこで数人の女性に出入り口を封じ込まれた。

「あなた、西藤くんのなに?」

不躾にそう聞かれてイラッとした。
きっと分かってて聞いているんだと思う。
でも、自分の口から言いたくないから私から聞き出したい。それが見え見えだった。

「彼女ですけど、何か?」

キッパリとそう言ってやると、その場にいた女子全員の顔が見事に歪む。この上なく気に入らなさそうな顔でこちらを睨み付けてくる。

「なんたってあんたみないな子供っぽい子が公斗くんの彼女なのよ」

明らかに認めない、認めたくないという風に言い放つ。
何よ、知らないわよ。私に八つ当たりしないで欲しいわ。
恋愛関係に精通している私はこの人たちの行動にピンと来た。嫉妬してリンチしに来たって訳。
学祭に参加してからずっと感じていた殺気を含む視線も、犯人はコイツらだとピンと来た。
いい歳した大人の女性が、しかも私より頭も良くて年上の女がこんな事をするなんて、女の嫉妬の醜さったら無いなとリンチされながら他人事のように思っていた。

「今までの彼女は大人で落ち着いていて、彼にお似合いだったから目をつぶっていたわ。だけど、あんたはまるで今までのタイプと違う」

ははーん。要するに本当に私の事がお気に召さない様だ。
今までは自分達にも歯が立たないような完璧な女性で諦めが着いたけど、私は真逆で負けたこと、自分を選んでくれなかったことに逆恨みしているってわけね。
重ね重ね失礼な奴ら。だから選ばれないんだって、分からないの?
言っときますけど、私だって美人で明るくて社交的だからか・な・り!モテるんですからね!
私より頭も良くて人生経験もあって、大人なのに残念すぎでしょ。
本当に嫉妬で、こう言う事する人がいるのね。
と言うか、真面目で寡黙でいつも仏頂面下げて勉強ばかりしている公斗にもこうして愛してくれている人がいる事に驚きと、何だかホッとした。さっき、友達いないって聞いたばかりだったから。
まあ、マニア受けはするかもね。前世でもこの真面目さと見たくれの良さでモテてたみたいだし。

ホッとしたと同時に私はふとうさぎとまもちゃんを思い出した。
まもちゃんも、うさぎ一筋だけど頭脳明晰でイケメン。うさぎからも男子校なのに高校時代はモテていたと聞いていた。
そんなまもちゃんが共学である大学に入ってモテていないわけ無い。
チャンスが来ると思って一途に思い続けても彼女がいると断られて逆恨みして、うさぎを傷つけに来る輩がいるかもしれない。

公斗でも今こうして私に逆恨みして逆ギレしに来ているんだ。ありえない話じゃ無い。
実際にこんな行動にとる人達がいるって知った以上、うさぎにもっと気にかけてあげないとなとリンチされている最中にも関わらず人のことを気にして、気を引き締める。
まもちゃんがいるから大丈夫だと思うけど、本人にもモテる事は自覚して周りを用心する様に杭を刺しといてやらないとな。

「へぇー、あんたら公斗の事、好きなんだ」
「そうよ、悪い?」
「別に。好きになるのは止められないし、私に止める権利ないもん」

そう、人を好きになる事は悪いことじゃない。素敵な事だ。
好きな人がいる。それだけで毎日が華やかで楽しい。生きることや勉強を頑張る糧になる。
いつか振り向いて貰えたら。恋人になれたらって思って意中の人にアピールするのもドキドキする。
彼女達の事は私だって気持ちが分かる。
そう彼女達の心に寄り添っていたら、とんでもない事を言われ、吹っ飛ぶ事になった。

「だったら公斗くんを私に頂戴!」

はい?今、なんて言った?
公斗をあげる?
誰に?
アゲテモイイ?
ううん、嫌だ。

「あげない!」

私は、ハッキリと彼女達に言い放った。
余りにもハッキリ意思表示したもんだから、彼女達はたじろいだ。

「ど、どうしてよ?あんたより私の方が公斗くんを好きな期間は長いし、好きな気持ちも負けないんだから!」

好きの長さとか、重さなんて関係ないでしょ?
本当に、重ね重ね何言ってんのこの女。
期間で言ったらあんたの方が私から見たらぽっと出じゃねぇか!
こちとら前世からずっとだぞ!
そもそもあんたらの気持ちを押し付けても公斗は揺らいだりしないでしょ?
大事なのは公斗の気持ちでしょ?
公斗があんたらを選んでない。それが全てよ。一昨日来やがれっつーの!

「公斗は物じゃないからよ!その彼があなた達じゃなくて私を選んだの。あんた達は選ばれなかった。悔しいでしょうけど、認めなさいよ」

彼女としてのプライド。
公斗は物じゃない。
はい、そうですか。じゃあ、どうぞ。なんて出来ないし、したくない。
公斗は誰にもあげる気なんてないし、別れるなんて考えられない。
私だって辛い思いをしながら、ずっと好きだった。愛し続けていた。
やっと付き合いはじめてこれからなんだ。
そんな時にはい、そうですかって公斗を手放すなんて嫌だ!絶対にしたくない!

「分かった?もう行くからどいて!」

公斗をモノ扱いする奴の顔なんかもう見たくないと思い、勢いでトイレから出ようとした。

「彼のところには行かせない!」
「まだ話は終わっていないのよ!」
「あんた、年下なのに生意気なのよ!」

はぁ。3人寄ればなんとやらって言うけど、こんなに聞き分けないアホとは。私より頭いいはずなのに、言動が痛い。
そりゃあ選ばれないわけだわ。

「話す事はもうないって言ってんの!こんな行動取って、公斗が喜ぶとでも思ってるの?彼女に危害及ぼしたって聞いたら、きっと彼は軽蔑するわよ。そんな事も分かんない?」

ま、分からないからこんな愚かな行動をとってるんだろうけど。

「それに、これ以上長引いたら流石に遅いって何か勘づくわよ。彼、感がいいから。まぁあんた達がこの現場見られてもいいなら私は別にそれでもいいけど」

ずっとトイレに缶詰状態に、流石に私もイライラしてきて出たくなった。
私の最終忠告に、やっと事態の重さや自分たちの愚かな行動に気付き、封じ込まれていた出入り口が空いた。
彼女達が犯した行動は、公斗を心から愛するがゆえ。間違った行動だったけど、気持ちは痛いほど分かる。それだけ本気で公斗のことが好きだったのだ。

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