百億ボルト・ロックン・ルージュ
『百億ボルト・ロックンルージュ(クン美奈)』
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戦いや勉強、恋愛が一段落して落ち着いてきたある日、長年の夢だったアイドルのオーディションに受けてもいいと両親やアルテミスから許可が出た。
うさぎや公斗達も「頑張って」と後押ししてくれたから手当り次第書類を送ってオーディションに受けまくろうと決意した!
アイドルオーディションには歌が必須だから練習にカラオケに行こうと思い、どうせなら客観的に的確に忖度無しに評価してくれそうな公斗も誘って練習しようと考え、早速連絡を入れる。
「カラオケ行かない?」
「何故カラオケなんだ?」
「オーディションに歌う勝負曲の練習に付き合って欲しいの、ダメ?」
「ああ、別に構わんが?」
「マジ?いいの?」
「何だ不服か?いつ行くんだ?」
「じゃあ次の休み、空いてる?」
「いいぞ」
案外あっさりと了承され拍子抜けする。
いつもなら「何故カラオケなんぞ騒がしい所に行かなければならんのだ。俺は暇じゃない!うさぎさん達と行け(棒読み)」と言われると思ったから。なのに今回素直に付き合ってくれるなんてなんか怖い。どういう風の吹き回し?ヒョウとか降ってこなきゃいいけど…
そして当日、公園で待ち合わせてカラオケ店へ向かう。
向かいながら快諾してくれた理由が気になり質問する。
「何であっさり付き合ってくれようと思ったの?」
「単純にお前の歌声が聞いてみたかっただけだが?」
何変な質問してるんだ?みたいな意外な顔であっさりストレートに答えられ、こっちが照れてしまった。
普段は素直じゃない天邪鬼の王様みたいなやつがストレートに言うと殺傷能力半端ないわね。本当にヒョウ落ちてくるんじゃないでしょうね?寧ろ槍の方が降ってきそうな勢いで何か怖い。
「そ、そう。私の歌声は美声よ~♪そして上手いから腰抜かさないでよ笑」
「誰が腰なんか抜かすか!で、何時間歌う気だ?」
「そうねぇ~たっぷり練習したいから3時間くらい?」
「まぁそれくらいが妥当だな」
店に入り、受付で3時間コースで予約をして渡された部屋番号付きのバインダーを持って部屋へ入る。
最初から採点機能を付けようか迷ったけど、最初は喉も温まってないし調子が出てきてからと気楽に歌ってみようと思いとどまった。
久々のカラオケだけど昔、音鳴くんとの関係をステップアップさせる為にマラソン大会の練習をサボってまでボックス通い詰めて持ち歌100曲作ると燃えてた日々が作った私の美声と歌唱力。
伊達にボックス通い詰めてねぇぜって所を見せつけてあげるわ!
ついでにその時に頑張ったご褒美としてアルテミスから貰ったアイテムのマイクで歌おうと持ってきていた。
これで歌うと心無しか上手く歌えるような気持ちになるし、何か力がみなぎって来るのよね。
持ってきたマイクを鞄から出すと君斗が不思議そうな顔をして聞いてきた。
「お前はマイクを持参して歌うのか?」
「そう!これで歌うと力が湧いてくるのよね~」
「マイマイクとは恐れ入った」
「良いでしょ~マイマイク!」
持ち歌いっぱいあって何を歌おうか迷った末、私が1曲目に選んだのはせーこちゃんの「ロックンルージュ」、せーこちゃんはアイドルの王道だからねぇ~♪
それにまだ喉が温まってないからウォーミングアップのつもりでせーこちゃん入れたけど、マイクを持つとついつい本気で歌唱してしまう。
このヴィーナスマイクのお陰もあるのかもだけど。
結局軽く歌うつもりで入れた最初の曲から飛ばしてしまい、最初から最後まで本気度マックスで歌ってしまい少し後悔と自己嫌悪に陥る。
「どうだった?久々に歌いに来たから本調子じゃないんだけど…」
「中々良かったぞ。アイドルばかり歌うのか?それ以外も歌えた方がいいんじゃないのか?」
「舐めないでよ!昔ボックス通い詰めて持ち歌100曲あるんだから!色々歌えるわよ!」
「そうだったのか。アイドル志望は本気だったんだな」
アイドルの為にボックス通ってたんだと勘違いしてるけど、私の夢に対する本気度は伝わったみたいで良かったわ。
君斗も歌うのかしら?
私ばっかり歌うのも何だし、どんな歌をどんな感じで歌うのか普通に気になるから一応歌うか聞いてみるか?
「あんたも何か歌えば?」
「良いのか?」
「いいわよ!せっかく来たんだし、一緒に楽しみましょうよ」
「じゃあ歌わせてもらうか」
今日はホント素直ね?調子狂っちゃうじゃない!
ってか何歌うんだろ?めっちゃ気になる!
歌う曲が決まったらしくテレビ画面を確認すると、ザッキーの「I Love You」?王道ラブソング?しかもバラードよ?
愛とは程遠そうなぶっきらぼうな人がどの面下げてこんなの歌うの?ってか上手いの?
失礼な事を思いながらドキドキして歌うのを待っていると、曲が始まると立ち始めて驚いた。
え?スタンディングで本格的に歌うタイプなの?しかもマイクの持ち方もカッコつけて普通の持ち方してないし…。(GLAYのTERUさん風の持ち方イメージで)
まさかカラオケ好きなの?謎多すぎて思考回路ついていかないんだけど…。
色んなことを思っていて混乱していたら君斗が歌い始めたから真剣に聴き入る。
声が低いからか単純に合うし、気合い入れて歌ってるだけあって上手い!
上手いのと歌詞が前世や公斗と付き合う前の事とか重なって自分とリンクしてちょっと泣きそうになる。
ダメだ!負けるな美奈子!
そう言い聞かせながらも終わった公斗に思わず拍手を送ってしまい、自己嫌悪に陥る。あちゃーやっちまった!
「めちゃくちゃ上手いじゃない!今まで隠してたなんてズルい!ムカつく!」
「別に隠してたつもりは無いが?今までカラオケに一緒に来る機会なかっただけだろ」
「そうだけど、こんなに上手いと思わなかった!悔しい!こうなれば採点機能付けるわよ!対決よ!」
「別にいいが、負けても知らんぞ?それよりオーディションの練習に来たんじゃないのか?練習はいいのか?」
「忘れてないわよ!強いてはオーディションの練習になるから一石三鳥よ!」
「それを言うなら一石二鳥だろ?勝手に足すな!」
「なんでもいいわよ!カラオケ対決行くわよ!」
「望むところだ。負けて悔し涙流しても知らんぞ」
「そっちこそ、負けて落ち込まないでよね?」
カチッ!!←負けず嫌いスイッチオンの音
こうして何故かカラオケ対決の幕が華麗に開けた。