Melty Kiss


暫くして漸く離され、呼吸困難に陥りそうになっていた私に彼の次の一言に今度は心臓が止まりそうになった。

「俺はこっちの方が好きだ!」

な、な、な、な、何よそれ?
殺傷能力あり過ぎじゃない?
愛の女神だけど恋愛経験豊富じゃないのよ?
あんなことされた後にこのセリフは天国行きまっしぐらよ?
私をどうしたいのよ!もう!

「なっ!ズルいし酷い!」
「酷いのはどっちだ!夜天って誰だ?」

さっき私がとっさに言った言葉が相当堪えて引っかかったのか、怒った顔で答えるまで逃がさないと言わんばかりの顔と凄んだ声で言ってきてたじろぐ。

「同じ学校のアイドルよ!」
「好きなのか?」
「どうして?」
「俺がいるだろ!他のやつは見るな!」

イライラしながら私が持ってきたチョコを取り上げる。

「いらないんじゃなかったの?」
「いらないとは言ってないだろ?お前が1人突っ走ったんじゃないか!」
「あの言い方だったらいらないって思うでしょ!いるの?」
「1人じゃ食いきれない」

無造作に包装を開けて口の中に入れようとした公斗を慌てて制止する。

「嫌いなら無理しなくていいわよ!?」
「無理などしていない。せっかく持ってきてくれたんだ、食わせろ!」

チョコ嫌いな癖に何でこんなに偉そうに言ってくるんだろ?

「分かったわよ!これ、一応まこちゃん監修で私の手作りでビターチョコで苦めにしてあげてるんだから、そこの所よろしくね?」

言い終わるが早いか、公斗は自分が食べるんじゃなくて私の口にチョコを入れて来た。え?何の罰ゲーム?自分の手作りを自分で食べるって惨めな展開、ここに来て予想してなかったわよ!アレか?私の手作りって聞いて毒味させようとしてんのか?料理不得意だから。味見してないって言ったの根に持ってるのかも。
色々腹立てながら食べているとまた唇を塞がれて舌を入れられて驚いてしまった。チョコ食べてる最中なんだけど?って思ったらチョコを舐め取られてるっぽい。突然のディープキスにボーッとしてる頭で考え巡らす。目当てはキスに託けてチョコ?もしくはチョコにかこつけて私?
これが所謂憧れの食べ物を使ったディープキスプレイって奴?
口の中のチョコを全部取られたところで唇が離された。

「ん。こうすれば食べられる」
「んぁっはぁー、何それ?普通に食べられないわけ?」

チョコ食べる度に私通して食べられたら私の身が持たないんですけど?

「嫌だったか?」
「別に嫌じゃないけど。チョコの味はどうだったのよ?」
「まぁまぁだな。俺は美奈子の方が好みだ」
「なっ///」

チョコとディープキスの甘々二重奏に加えて公斗のストレートな愛の告白に頭が痺れて完全に思考回路はショートした。



でもチョコはやっぱり苦手みたい。
チョコを上げる度にディープキスで私を介して食べられるくらいなら身が持たないし、あげるのはもうやめた方がいいと流石に悟り、次からはオッサンに相応しい物を用意しようと決意した。





後日、無責任に応援したうさぎに報告がてらクレームを入れると、「私だってチョコフォンデュとか言ってまもちゃんに身体中舐められて大変だったんだから~!」と逆にとんでもない惚気話が返ってきた。
私たちの遥か上の大人の遊びをしていて、自分のエピソードがちっぽけ過ぎて色々恥ずかしくなった。
…しかしまもちゃん、なんつー趣味持ってんのよ?うちの公斗も大概だけど…
何はともあれ、うさぎに無理させないでよ?







おわり

Happy Valentine's-Day♡

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