二人の長い一日


公斗はと言うと美奈子の父親が言ったように社会人になった事もあり、それなりの責任感と覚悟が出てきた。美奈子の事を真剣に考えているからこそ挨拶をする必要があると考えていた。
それを父親が察してくれてホッとしていた。

当の父親はと言うと実は試していた。
母親に美奈子に彼氏がいることを聞かされ、可愛い娘が付き合っている男がどんな奴なのか?甚平を渡して様子を伺っていた。
そうとは知らない当の美奈子はいの一番に公斗に聞いていた。お陰でいい方向に向かい、今に至っていた。

「夕飯、食べて行くでしょう?」

色々と喋っていたら結構いい時間になっていた。
食べると思い、朝から腕によりをかけて作っていたが、最後の仕上げをしようと公斗に聞いてみた。
そんな事とは知らず、美奈子が作っているのでは?と思った公斗は言い淀む。

「食べていきなよ!ママの作った料理はどれも美味しいから。公斗の好きな物ばっかリクエストしといたからさ!」
「一人暮らしで余りいい物食べてないだろ?そうしなさい」
「では、お言葉に甘えて」

美奈子が料理に関与していないことと父親に勧められては断る訳には行かなくなった。
しかし、美奈子の母親と言えど美味しいかは怪しいとも疑っていた。美奈子は大概味音痴でもある。期待せずに行こうと思った。

「じゃあ最後の仕込みして来るわ!」
「美奈子も手伝う~♪」
「大丈夫よ、あんたが手伝うと後が大変だからかえって手伝ってくれない方が助かるのよ。それより出来るまで部屋とか案内してあげたら」
「……分かった。そーする」
「部屋だって?2人っきりなんて危ないぞ!」
「はあ?何も無いわよ!心配し過ぎでしょ、パパ!アルテミス連れて行くからいいでしょ?」

突然見張り番として指名されたアルテミスは不服そうにニャーと鳴くが、素直に美奈子達の後に着いて行く事にした。何せ面白そうだからーー。

「まぁ、アルテミスがいれば安心か」

何故か父親からアルテミスは絶対的な信頼を得た。
果たしてアルテミスはその信頼を果たす事は出来るのだろうか?

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