あわてんぼうのサンタクロース


そうして連れてこられたイタリアンレストラン、予約席に座ると夜景が見えて、その中心にはさっきまでいた東京タワーが存在感を露わにしている絶好の席だった。

「うわぁ~きっれぇーい♪すっごい最高の場所!」
「だろ?お前が気にいると思ってな」
「嬉しい!雰囲気のいい店でこんな夜景が綺麗な席でディナーなんて最高!」
「気に入ってくれてよかった」

急に誘った引け目か素直な君斗に心臓が早鐘を打って鳴り止まない。落ち着け、私の心臓!

ピザとパスタと飲み物を適当に頼む。君斗はお酒を飲みたそうにしていたけど、車で来ている手前飲めないので私と同じシャンメリーwwwこの顔でシャンメリーはギャグね?ウケるわ!

夜景をバックにシャンメリーで乾杯する。

「メリークリスマス!」
「メリークリスマス!」

本当にシャンメリー似合わないし、こんなにメリークリスマスも似合わない人がいるなんて笑えるわね?
失礼な事を思いながらパスタとピザを食べる。
東京タワーで大はしゃぎして思う存分楽しんだ後で結構空腹だったからめっちゃ美味しい!フレンチもいいけどイタリアンなクリスマスも悪くないわね!

食べ終わると、そろそろ行くか?と言われたのはまだ19時30分過ぎのこと。敏腕マネージャーのタイムスケジュールとしてはまだ早い時間だからこの後どうするのかと疑問が湧く。

都内を適当に走らせているのか街中のイルミネーションを見ながら車の中でクリスマスの雰囲気を楽しめてとても楽しいひと時をすごした。

でっかいクリスマス・ツリーがある海辺に車を停車する君斗。

「これ、プレゼントだ」

車の中でプレゼントを渡されて驚いた。東京タワーでもイタリアンレストランでも何も無かったから、このまま何も無く解散かと思っていたから。

「ありがとう。開けていい?」
「ああ」

プレゼントの包装を開けると君斗の髪の毛の色と同じ色の銀色のリボンが付いたカチューシャだった。今付けてる赤いリボンみたいに大きくも立派でも無いけど、キラキラしててとても綺麗だった。

君斗は私の手からそのカチューシャを取って、私の赤いリボンを解き、頭にカチューシャを付けてくれた。その顔はとても満足そうだった。
理由は聞かなかったけど、きっと赤いリボンにずっと嫉妬してたのかも?とふと思った。いつも身につけていたし、前世は姫直属の戦士に決まった時にクイーンから頂いたもので、現世は東先輩から言われてずっと付けていたし。もう私の一部でトレードマークだったりするんだけど、君斗と会う時はこれ付けてあげよう。

そんな君斗と無言で熱い視線がぶつかったからお互い顔を近づけキスをする。いつもと同じただの長いキスだと思っていたら唇をこじ開けられ、舌が入ってきて心臓止まるくらい驚いてしまい、引き離そうとするもそれを許してくれず、戸惑いながらも舌を絡めて応戦した。それはとても深く激しくて、中々私の事を離してくれず、息苦しくなったけど、君斗の数ヶ月分の私への想いみたいなのが痛い程伝わってくるような甘く優しい深いキスだった。
味わう様な長く切ないキスが漸く終わると、頭が蕩けて何も考えられなくて放心状態とはこの事かって感じになっていた。

そのまま無言の時間が数分流れたかと思ったら、車を発車する君斗。
さっきの深いキスの余韻が残る中、時刻が21時に迫っている事に気づき、私を送り届けようと急いでいるみたいだった。
会話もないまま家の近くに停車するとまたそういう雰囲気になり、キスをする。今度は私からお返しで舌を入れて絡ませる。それに君斗も応えてくれ、さっきのキスよりも激しく長く深いものになった。

漸く顔を話すと余裕のない君斗の顔と視線がぶつかった。

「何よ?」
「いや、落ち着かなくてな」
「やられっぱなしは嫌なのよ!やられたらやり返すの!倍返しで!」
「これ以上いたら返したく無くなる」

とても意外な言葉にドキッとして心臓が高鳴った。君斗ももっと私と一緒にいたいと思ってくれているのかな?って。

「いや、忘れてくれ」
「無理よ!」
「これ以上いたら止まらなくなるぞ?」
「望むところよ!」
「意味分かってるのか?」
「分かってるわよ!バカにしないで!」
「それはすまなかった。だがもう今日は帰れ!これ以上頑張らなくても良い。十分なクリスマスプレゼントだった」

狼になったかと思ったら正気に戻り、帰ることを即された。
せっかく人が勇気出して頑張ってやったのになんなの?
まぁ車の中で初体験は私も流石にちょっとだったから良かったけどね。
でも、せっかくその気になってみたのに少し残念だったけど、君斗が紳士で良かったと思った。次の機会にお預けね!

チラッと車内の時計を見ると21時はとっくに過ぎていたけれど、最後の最後まで敏腕マネージャーの仕事を全うしようとしてくれようとしてくれているのだと気づいた。

「ありがとう。今日は楽しかったわ」
「こっちこそ、急ですまなかった」
「良いのよ!気にしないで」

車を降りて家に帰った私は、しばらく放心状態に陥っていた。
何の予定も約束も無かった事が一転、怒涛の1日でとてもあっという間だったから。敏腕マネージャーだと思ってたけど、まるであわてんぼうのサンタクロースみたいだった。




おわり

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