『あわてんぼうのサンタクロース(クン美奈)』

“明日16時に自宅に車で迎えに行くから用意しておけ”

突然クリスマスイブの朝に君斗からメールが入り、驚く。…は？約束してなかったから着る服もプレゼントも用意してないわよ！本当にいつも突然だし、イベント事にどう向き合ってるのか全くさっぱり分からない人だわ。ってか会えるの？こっちだって色々準備あるんだから会えるんだったら言っておいて欲しいわよ。サプライズのつもりなの？しかも命令系…何様？俺様、リーダー様(って私もなんですけど)

しかもイヴでは無くて何で25日なんだろ？次の日休みだから？それとも金曜日は私の日だから？

ってそんな事考えてる場合じゃないじゃない！クリスマスプレゼント買いに行かなきゃ！もういっその事面倒だから｢プレゼントはあ・た・し｣ってのをやってやろうかしら？(美奈子の憧れシチュ)

私の誕生日から2ヶ月、実はあれ以来あまり進展なく今に至ってたりする。とは言ってもそういう雰囲気には何度かなっていてキスは普通にしてるんだけど、その先が中々踏ん切りつかずに何かと理由をつけて逃れるに至っている。ええ、ディープキスすらまだよ！悪い？

だから結局｢プレゼントはあ・た・し｣は今の私には憧れでも軽々しく出来そうもない。ハードルが高い！寧ろ高飛びよ！

取り敢えずデートに行くのかは分からないけど、そこで欲しいものを買ってあげるのが1番嬉しいのでは？と時間が無い中、やけくそで最低な考えが纏まる。

｢俺だ。今お前の家の前にいる。まだか？｣

終業式から帰って来て、昼から中着る服や下着を吟味していると催促の電話が来る。もう16時？と時間の流れの早さに衝撃を受けて時計を見ると15時30分だった。え？早くない？まさかクリスマスだからってウキウキして楽しみにしてるの？本当全く予想外過ぎて頭がついて行かない。

｢まだ16時になってないじゃない！何でこんなに迎えに来るの早いの？｣
｢暇で早く用意が出来たからだ｣

私はまだよ！私の都合は良いのか？俺様都合か？ズルいわ！お陰で結局適当に服を着て出て行くことになってしまった。コートだけはクリスマスらしく赤いロングコートを羽織る。頭のリボンと同じ赤いコート。

｢ごめん、待った？｣
｢いや、こっちこそ予定外に早く来すぎてしまってすまなかった｣

クリスマスだからか素直に謝ってきて驚いた。まぁ言い争って楽しめないのは私も嫌だし、クリスマスに免じて許してやるか？この日に私に会ってくれるんだし、ここは大目に見てやろう。

｢良いわよ。クリスマスに私を選んでくれただけで上出来だし。けど、急過ぎ！プレゼント用意出来なかったんだけど…｣
｢急に誘ったから構わん｣

車を走らせながら会話する。どこに行くんだろう？やっぱりこの方向だと東京タワーかな？

｢何となく想像着くけど一応聞いてみるけど、行先は東京タワー？｣
｢お前にしては100点満点の回答だな｣
｢嫌味な言い方ね！引き出しそれしか無いの？｣
｢あの時ゆっくりできなかっただろ？リベンジだ。夜は人も多いだろうからこの時間に行ってゆっくり見る。夕飯は18時に近くのイタリアン予約済だ。その後21時にはお前の家に送り届ける。｣

いきなりどこの売れっ子芸能人の敏腕マネージャーなの？って聞きたくなるようなタイムスケジュールを早口で言われて混乱する。
ディナー予約済って事は前々からクリスマスは私と過ごそうとしてたって事よね？それをギリギリ、いや寧ろほぼクリスマス当日に言ってくる心理とは…？言い忘れてた？それともやっぱりサプライズ？

そうこうしてる内に東京タワーに到着。丸2ヶ月振りの東京タワー、近くに来ると相変わらず存在感あって高くて迫力凄いわ。

この前とは違い、最初からウキウキワクワクしていた。今度こそ楽しむわ！

今度はどっちからともなく自然と手を絡ませて恋人繋ぎでエレベーターに乗り込み、談笑しながら頂上に向かう。
人は多いけど、昼間だから夜よりマシかな？って印象。
明るい時間だから前に来た時と違って夜景じゃないから雰囲気は出ないとは思いつつ、人が少ないからゆっくり見られるし、恋人たちのクリスマスにこうやって彼氏とデート出来ていることがただただ嬉しかった♡

土産屋さんを見て回って、そこで欲しいものがあればプレゼントしたいって言ったら欲しいものが特になかったのか無理しなくていいって言われた。別に無理してる訳じゃなくて、私が何かあげたかったのに…謙虚ねぇ。

その後もタワーの中を腕組んで私が思いっきり連れ回し続けると日が暮れてきて外を見ると夜景が広がり、幻想的な景色に感動する。

｢夜景に感動してる所現実に戻して悪いが、レストランの予約が迫ってきてるから行くぞ！｣

敏腕マネージャーから突然悪魔の囁きで現実に戻され、今度は私が連れ回される羽目に…。夜景に後ろ髪を引かれながら東京タワーを後にする。辛い。もっと見ていたかった…。ロマンティックって言葉が君斗にはあるの？無慈悲なの？前世はもっとロマンティックな人だと記憶してたけど、現世でのこの男はやっぱりクンツァイトであっても別人なんだ…と改めて実感する。
まぁイタリアンも楽しみだから無理矢理気持ちを切り替える事にした。