聖夜の奇跡
「うわぁ~、綺麗♪」
私は今、みなとみらいのクリスマスイルミネーションを見て、見とれている。
勿論、一人じゃなくて、男の人と一緒に。
恋人、という表現じゃないのは、そーゆー関係じゃ無いから。
だけど、クリスマスの特別な日に一緒に過ごしてくれるって事は、そーゆーの期待しても良いって事だよね?
それに、どーどーと言えないのは私たちの関係のせい。
私たちは生徒と先生、と言う関係性。ーーそう、つまりは禁断の恋って奴。
そんな事もあって、デートは近場では何かと都合が悪いとの事で、ここ、横浜まで遠征。
そもそも、どうしてヤバい関係なのにデートする事になったか?と言う事を説明しなきゃいけないわね。
それは、一ヶ月程前に遡る。
頭の悪い私は二学期の現国の中間テストがまさかの25点と言う不名誉な点数を取ってしまった。
その担当だったのが西塔先生で、私の想い人。その人から直々に補習を受ける事になった。そして期末は60点が目標だと言われ、途方に暮れ、出した答えが、ご褒美にクリスマスデートと言う約束だった。
まさかOKが貰えると思わず、驚いたけど、その後の私のやる気になったのは言うまでもなく。
そして期末テストを迎え、答案用紙に思いの丈をぶつけた。結果は見事60点オーバー!……ってもギリギリ超えた。と言うオチだけど。
ギリギリでも60点のボーダーラインは超えたから、先生にオネダリすると「約束だからな」と快諾してくれた。
けれど、場所を決めるのに一苦労だったのよね。
「東京23区はダメだ。危険が伴う」
「何でよ?」
「俺たちの関係はやはりバレると不味い」
「クリスマスに誰も私たちに関心ないと思いますけど?」
「念には念だ。用心するに越したことはない」
「じゃあ私、ネズミの国に行きたいでーす」
「人が多い。却下だ!」
「どの道、どこ行っても人は多いと思いますけどー」
と言った感じで、兎に角私の提案は尽く却下され、本当にデートしてくれる気あるのか疑問になって悲しくなった。
「それにどーやって遠出するんですか?まさか現地集合とか言わないですよね?」
この素朴な疑問に、益々ぶっきらぼうで怖い顔になって考え込んでしまった。
「仕方が無い。麻布十番駅まで迎えに行ってやるから待ってろ。場所は俺が決めておく」
そう言われ、25日の昼15時に待ち合わせを決めてその日は終了した。
そして当日、麻布十番駅で待っていると車で迎えに来てくれて乗せてくれた。
「横浜に行くぞ」
そう一言伝えると、カーステレオで流行りの曲をかけてくれた。長時間のドライブに私が飽きないようにと気を使ってくれたみたいで、その心遣いに嬉しくなった。
ただ、選曲かちょっとオッサン入ってたけど。一昔前の歌謡曲って……。
だけど、お陰でドライブ、めちゃくちゃ楽しかったんだよね。景色とか、曲もだけど。2人だけの空間ってだけでヤバいのよね。
何より、運転してる真剣な眼差し。それに車庫入れの時。ちょーカッコよくで益々好きになっちゃった♪
やっぱり付き合いたいなーって思っちゃったよね。立場上難しいのは一億も承知だけど。今日、決めたい!持って行きたい!そう決意を固めた瞬間だった。
そんな事とは知らない先生。横浜に着いたのもいい時間になったから、中華街で食べ歩こうと提案して来た。
クリスマスデートとしては雰囲気ぶち壊しだけど、大好きな人とだからいっか。と承諾して色々食べ歩き。美味しかったし、楽しかった。中華料理に罪はないもんね。
美味しい中華料理をたべ終わったら、夜も深け、イルミネーションが綺麗な時間になっていた。
クリスマスイルミネーションが有名なみなとみらいへと移動することに。
そして話は冒頭に戻るってわけ。