高校教師クン様と女子高生美奈子の禁断の恋物語


それから毎週金曜日の放課後、補習は繰り返された。
当初、部活がある美奈子はサボる日もあるかと思われたが、毎回バックれること無く出席した。
想定外に真面目な美奈子に西塔は見直し、感心していた。

「ところでせんせー?」
「ん?何だ?」
「この補習授業、いつまでやるの?」

ある日の補習で美奈子は素朴な疑問を投げかけた。
文句も言わず補習を受けている美奈子を感心していた西塔は、やはりこの疑問にぶち当たるか?と少し残念に思った。

「ああ、二学期の期末まで続けるぞ!」
「そっか」
「嫌か?」
「ううん」

そうだろうな、と予想した結果を聞いた美奈子は、12月半ばまで一緒だと喜んだと同時に、勉強は嫌だと複雑な気持ちになった。
そして、何とかこの残された期間で少しでも発展させなければと少し焦る。
ただ勉強してるだけで、色恋に発展していない。

「毎週補習してるんだ。今度はいい点取ってくれよ?」
「ええ~、ちょ〜プレッシャー!」
「最初の日にも言ったが、頭は悪くない。毎週頑張って理解力もアップしてる。大丈夫だ。俺はお前を信じてる!」
「何点目標?」
「そうだな……60点だな」
「60点?中間の倍以上じゃん?ジョーダンでしょ?」
「冗談など言わん」

いくら補習で頑張っているからと言ってもそんなに取れると美奈子は思えず、途方に暮れる。
これは、やる気の起爆剤が欲しいところ。
恋の逆転満塁ホームランを狙い、勝負に打って出る。

「何かご褒美があれば頑張れるんだけどな……」
「……何が欲しいんだ?」
「せんせーと一日デート出来る権利♪……なぁんてね?ダメよね……」
「ああ、構わんぞ」
「そーよね。やっぱりダメだよね~……って、ええ!良いの?」
「ああ、良いぞ?」
「何で?」
「いつも頑張ってるからな」

だからって了承されると思わなかった美奈子は単純に驚いてしまった。
一方西塔の方も、まさか自分がOKをすると思っておらず、気づけば了承していた事に驚いていた。
自分自身でもわからないが、毎週頑張っている事や前向きで明るい性格の美奈子に不思議と惹かれていたのかも知れない。
心の中で、出来の悪い子ほど可愛いとはよく言うが、全くもってその通りかと実感していた。

「やったぁ~♪美奈子、頑張る!」
「やる気が出たようで何よりだ」
「期末って事はクリスマス付近よね?」
「ああ、そうだな」
「じゃあ、クリスマスデート予約で♪」
「考えといてやるから頑張れよ」
「わぁーい、美奈子、頑張る♪」

ご褒美デートの約束を取り付けた美奈子は、その後の残りの補習を今まで以上の集中力で頑張った。
その頑張りを見て西塔は、年頃の女の子の恋愛の動力は凄まじいと感心した。
そして同時に、これは60点は軽く超えてくる。
冗談半分で二つ返事をして約束したデート、実現してしまうなと嬉しい様な複雑な何とも言えない気持ちになっていた。

「デートか……」

男と女である以上、恋愛感情と言うものを持つのは悪いことでは無い。
しかし、愛野は生徒で自分は教師。
デートの言葉に深い意味は無いのかもしれないが、どうしても身構えてしまう。
しかし、愛野の様に明るくて美人で、話していて楽しく、自然と笑顔になれる子にデートの誘いをされ、思いの外嬉しく、楽しみにしている自分がいることに驚いていた。

問題は彼女が60点以上を取らなければデートは出来ないということだ。
何としても高得点を取ってもらわなければならない。
残りの補習は下心も相まって今まで以上の熱量で教える事になった。

運命の日はすぐそこに迫っていた。
そして2人の距離も気持ちも縮まるまであと少し。




おわり

20211022

愛野美奈子生誕祭2021

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