高校教師クン様と女子高生美奈子の禁断の恋物語
「あーあー、早く金曜日にならないかなぁ~」
西塔の苦労とは裏腹に、当の本人である美奈子は補習の日を待ち遠しく思っていた。
「美奈P金曜日に何があるの?」
「な・い・しょ、よ☆」
「ええーずるぅーい!教えてよ。私たち、親友でしょ?」
「どーしよっかなぁ~」
「勿体ぶるなぁ~。好きな人とデートとか?」
「当たっても遠いって所かな?」
「えー何なに?詳しくキボンヌ」
「しょーがないなぁ~。西塔先生と補習なの♪」
「補習?全然楽しくなさそうだね……」
「何でよ!楽しいわよ!好きな人に教えてもらうのよ?うさぎだってまもちゃんと勉強は楽しいでしょ?色々教えて貰えて!」
「ううーん……」
歯切れの悪い返事に美奈子は、日常茶飯事的に衛に教えて貰える環境に置かれているから麻痺していて、この些細な幸せも分からないなんて贅沢だと思った。
その時はそんな事を思い舞い上がっていた。
しかし、現実は中々に厳しかった。
金曜日の補習当日。
西塔の不安とは他所に美奈子は自分の席に座って待っていた。
「ちゃんと残ってたか」
「残ってますぅ~。一応、この前の点数は反省してるので!」
嘘である。いや、本当だが、一番は下心でここにいた。
「そうだったのか?」
「あ!疑ってる?ひどーい」
「まぁこれを機にもっと頑張っていい点数取ってくれ」
「……頑張ります」
「さっさと始めるぞ。今日はこの前のテストの理解だ。いいか?愛野、お前は頭は悪くない。現に間違ってるものはケアレスミスばかりだ。要は最後の詰めが甘い」
「なるほどー、私、頭いいのか?」
「何故そうなる?」
「違うの?」
「頭のいい奴はケアレスミスなどしないし、満点とってるぞ」
「そっか、そうだね」
最早憧れの先生と2人きりの補習に完全に舞い上がっていた。
美奈子にとっては何でも褒め言葉として聞こえてくる。
「何故間違うと自分で思う?」
「うぅぅ~~~ん、集中力?」
「それは大前提として、勘違いと詰めの甘さだな。頭は悪くないんだ。もう少し理解する力を身につけろ。お前に足りないのはそこだな」
「なるほど~、それを克服すれば点が取れるのか?……出来るかな?」
「出来るかな?じゃない!やるんだ!お前なら出来ると、俺は信じている」
的確なアドバイスと絶対的な信頼感を得て、美奈子は嬉しくなった。
勉強は変わらず苦手だが、好きな先生に信じて貰えている。それだけで頑張れる。期待に応えたいとそう思えた。
「美奈子、頑張る!」
「口より手と頭を動かせ。まぁ心意気と威勢は買ってやるが」
単純に素直で良いと西塔は思った。
こういう空っぽな頭のやつの方が伸びしろがあって、教えがいもある。
「ところで愛野は英語が得意みたいだが?」
「何で知ってるんですか?」
「全体の学力を知っておくのも教師の勤めだからな」
何でもない教師あるあるだったが、美奈子には自分を知ってもらえる事が嬉しかった。
「そー言えば何で得意なんだろ?分かんないや」
期待はしていなかったが、見事裏切ってくれる美奈子に西塔はガックリした。
これでは対策も何も出来ない。八方塞がり状態である。
ひたすら教えるしかないという事か?
「今日はここまでにするか?」
この前のテストを一通り回答し終えたタイミングで夕方となり、長くやって詰め込むのも効率が悪いと打ち切った。
「終わったぁ~」
嫌いな勉強が終わるのは単純に嬉しい。
だが、先生との時間が終わるのは寂しかった。
「また金曜、同じ時間だ」
「わっかりました~♪せんせー、今日はありがとうございました」
「お、おお。お疲れ様。気をつけて帰れよ」
まさか補習で感謝されると思わず、驚き動揺する。