Re:スタート
side美奈子♡
公斗と付き合ったタイミングが私の誕生日と近かったから慌てて予定を空けてもらった。
半ば強引だったかなとは思ったけど、そうしないと予定入れそうだったのと彼の性格上面倒だと言い祝ってくれそうになかったから無理矢理予定を入れてやった。
何をして欲しいとも聞かれなかったから何か考えてくれてるんだと思って聞いてみたけど教えてくれず、当日までの楽しみに取っとけって!案外色々考えてくれてる上に秘密主義者なのね?
楽しみにしながら当日を迎えたから公斗の車で目的地に向かう最中にどこへ行くか聞いても黙って乗ってろ!ですって!どんだけ秘密にしとくのよ?
予想しながら着いた先を見て驚いた。
「東京…タワー」
意外な場所で絶句して言葉を失いかけた。
この場所が私たちにとってどういう場所だったか分かって連れてきたの?
転生してクンツァイトとプリンセスのダミーとして初めて出会った場所で、何より本当のプリンセスが覚醒と銀水晶が現れ色々な事があったところでもあった。
「嫌なら止めるが?」
東京タワーを前に言葉をなくして立ち尽くしている私に気遣う様に優しく声をかけてこられてハッとした。
動揺しているのが伝わってしまったのかもしれないけど、気を遣われるのも嫌だし別にそんなに気になんてしてないからつい強気になって行くわ!と宣言してしまった。
勢いで売り言葉に買い言葉で強気に出たものの少し不安になってしまい、また勢いで公斗の手を取って繋いでしまった。…こんな勢いで繋ぎたかったわけじゃないのに。悔しい!
公斗もあの時の事を覚えているのか無理はするなよ?なんて言ってくるけど連れて来ておいて何なの?何か意図があってここに来たんでしょ?だったら決心が鈍るような事言わないでくれる?
彼の本心を確かめたくて引っ張ってエレベーターに乗り込むと頂上に着くまで終始無言で空気が重いったらない!もう!何なのよ?私をここに連れてきた事後悔してるの?
重い空気に腹が立って頂上に着いたら繋いだ手を解いて展望台へ向かう。
良い感じに夜が更けて来て外の景色を見て思わず感動の声が漏れる。
「綺麗な夜景ね」
「そうだな。あの時は気づきもしなかったが」
公斗の方があの時の話を振ってきた。
鮮明に覚えていると言う。
そして何と前世の記憶を取り戻していたことも教えてくれた。
知らなかった。そんな余裕なんてなかった。
プリンセスを守る事に必死でクンツァイトやエンディミオン王子を気にする余裕が持てなかった。
それに次に現れた時もプリンセスと銀水晶を狙っていたから躊躇なく前世と同じ様にまたクンツァイトをこの手にかけた。勿論、あの時はああするしか無かったから後悔はしてない。
だけど再転生して出会ってもう一度好きになってこうして付き合う事になって、少なくとも心のどこかで引っかかっていたのかもしれない。
あの時以来の東京タワーだったけど、別に避けていたって訳じゃ無くて、戦いや忙しい日々の中、来るタイミングがなかったし必要もなかっただけだったけど…。
公斗があの時の事を謝って来たけど別に気にしてなんかなかったし、何なら私はこの手でクンツァイトを殺めた、その方が大罪で許されることじゃない。
お互い様だしおあいこ。
躊躇なく殺した事を否定するどころか、うさぎを1番に想ってる私を肯定してそのままでいても好きでいてくれると言ってくれて嬉しかった。それだけで充分だった。
公斗もまもちゃんが優先だと言っていた。それでいい。それがいい。その関係性が私たちらしさで楽だし、だからこそ私はこの人を選んだ理由で好きになったきっかけだから。
気づけば過去を清算してホッとしてここに来て初めて弱音を吐いていた。
ここに来てあの時の事を話し、お互いの気持ちを確かめ合ってスッキリしたら溢れてくるものが止められず涙が頬を伝っていた。
やだ、私らしくもない!止まれ涙!
戸惑っていると公斗に気付かれ、何も言わず涙を拭ってくれた。
と思ったら抱き寄せられてびっくりして涙が止まった。
公斗の胸の中あったかくて安心する。
甘えてもいい、ん、だよ、ね?
弱いとことか見せてもいい、ん、だよ、ね?
優しく抱きしめられてホッとしておずおずと手を回し、抱きしめ返す。
しばらくしてもう大丈夫と笑顔で顔を上げると心配な顔で見てる公斗と視線がぶつかった。
いつもの私に戻って東京タワーを満喫しようと外を見ると私の守護星である宵の明星が光り輝いていた。
元気な私の姿を見てホッとしたのか大丈夫そうだなと言われ、話をはぐらかした。
こんな綺麗な場所に誕生日で来てるのにいつまでも過去の暗い話なんてごめんだわ。
話せず目を反らせてきたいつかは話さなきゃいけなかった事をここでちゃんと話せたしスッキリ公斗と付き合って行けるって確信したし。長々話すことでもないしね!
「ここに連れて来てくれてありがとう」
誕生日に色々考えた結果、ここが一番相応しいって、ここからまた私達の関係を始めたいと思ったから連れてきてくれたのよね?
思惑通りスッキリ吹っ切れたわよ!
だからアンタもいつまでもくよくよしてんじゃないわよ?
私達にそんなの似合わないでしょ?
そんな事を考えながら守護星を見ていると公斗が近付いてきて視線がまたぶつかった。
真剣な眼差しをしている公斗に目が逸らせずにいると、ん?これはもしやキ、キ、キスの流れ?そう思い、意をけして目を閉じ背伸びをして待ってみると、柔らかくて暖かいものが唇に触れてきた。
私達のファーストキスは守護星に見守られ、淡くほろ苦いフレンチ・キスだった。
「またここに連れてきてね♪」
キスが終わった後、沈黙に耐えられず、次からは普通に楽しみたくて公斗にまた東京タワーに来たいとお願いした。
「じゃあまた来年の美奈子の誕生日に来るか?」
「また誕生日?別に良いけど」
今度は最初から全力で楽しむわよ!
こうして東京タワーは私達にとってとても大事な場所になった。
初めての事が多かったし、思い出深い場所にもなった。
ここで誕生日を過ごせて良かった!
誕生日祝ってくれてありがとう。
END
2020.10.22 祝♡美奈子誕生日