03:選んでみろ
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レンは警察署で事情聴取を受けたあと、家に送られる予定だったが、「自分で帰れる」と言って警察署から出て行ったところだ。
左肩にはリュックをかけ、右肩には包帯が巻かれている。痛みはだいぶ引いていた。
肺もしばらくして呼吸が楽になったので、入院まではいかなかったが、いくらなんでも回復が早いと怪訝に思った。
「……変な力使う奴らに襲われて自分も変な力使って殺しました、なーんて、言えるわけねえじゃん。銀夜っていう銀髪ヤロウは逃げやがったし……」
呟きながら、重い足取りで車と人通りの少ない道を選んで家へと向かう。
(あたしは、これからどうしようか……)
悔しさにコブシを強く握り、奥歯を嚙み締めた。
両親と兄―――水樹を1週間で全て失ってしまい、途方に暮れる。
遅れてやってきた喪失感。
水樹を失ってしまった事実を思い出して目尻に涙を浮かべ、慌てて手の甲で拭った。
小道に出ると、目の前の信号が赤に変わって立ち止まる。
だが、車の姿が見当たらず、そのまま横断歩道を何食わぬ顔で渡った。
なんの躊躇いもない。
車が来るなら来るで、轢かれてしまってもいいと思うくらい自暴自棄になっていた。
横断歩道の中心まで進んだ時、
ガチャンッ!
「へ?」
背後から聞こえたなにかが落下した大きな音に振り返ると、
「よいしょ」
こちらに背中を向けた、紫色のツナギを着た、肩につくかつかないかの縮れた長い黒髪の男が落下した信号機を肩に担いだ。
裸足で、一見浮浪者のような風体の男だが、年齢は若そうだ。
ツナギの腰部分に巻かれたベルトは留められずにだらりと地面に垂れ、男が動くたびに引きずられる。
「な……?」
連日続く不可解な事態にレンは眩暈を覚え、涙は完全に引っ込んだ。
その場に完全に立ち止まってしまい、男の様子を凝視して困惑した表情を浮かべた。
(信号機、へし折ったのか? …なぜ? )
当然の疑問だ。
「あー、意外に重いな」
ツナギの男はだるそうに言う。
(じゃあ、担ぐなよ!)
レンは思わず口に出しそうだったが唇を噛んで耐えた。
(ムチャクチャ怪しい! 不審者? いや、100不審者だろアレ!)
ツッコみたい気持ちをぐっと抑え、無視するべきかと思案した時だ。
不意にツナギの男が振り返り、目が合った。
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