02:人間じゃない
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レンは兄の顔を覗き込むと、兄は目を閉じたまま息絶えていた。
呆然とその死に顔を見つめる。
「兄貴…? ……おい…!」
「ははは、死んだ死んだ」
銀夜がはしゃぐように笑い出し、レンの感情は、恐怖と喪失感を塗りつぶすように怒りが頂点に達した。
鋭い視線が銀夜を射抜く。
「テメェらぁぁぁぁ!!」
怒りの形相で銀夜に突っ込むが、間に割り込むように式條が立ち塞がった。
「テメーも腐っとけ」
手を伸ばし、レンの顔をつかもうとした。
兄と同じ手は食わない。レンは身をひねって寸でのところでかわし、式條の手から匂った腐臭に顔をしかめたが、すかさず右手で式條の胸倉をつかんで自分側へ引っ張り、
ゴッ
渾身の左のコブシでその顔を殴りつけた。
「うっぐ…!」
衝撃に脳が揺らされたの視界は歪み、体がよろける。
「テメーに用はねえんだよ!!」
「ぐげっ!」
レンは式條の腹部にミドルキックを食らわせて乱暴にどかし、沸騰した怒りの感情のままに銀夜に突進した。
殺意を込めてその顔を殴りつけようと勢いをつけてコブシを振り上げたが、
「う…っ」
肺に痛みを覚えた、その瞬間、
「がはっ!?」
突然、喀血を起こす。
そのまま、傍にあった電柱にもたれ、座り込んだ。
「かはっ、げほ、ごほっ……」
口を片手で押さえるが、噎せるたびに血が口から流れ落ち、呼吸もしづらくなる。
式條は「イテテ…」と蹴りを入れられた腹部を摩りながら銀夜の傍らに近付き、勢いを失ったレンを見下ろした。
「式條、おまえはだいぶ“腐食”が扱えるようになってきたな」
「ふ…しょく…?」
銀夜の言葉を聞き取ったレンは息を荒くしながら銀夜を見上げる。
なんの話をしているのか理解できなかった。
明らかな形勢逆転に、勝ち誇った笑みを浮かべる式條は右手のひらをレンに見せながら説明する。
「ああ…。オレの手に直接つかまれば致命傷。匂いは毒。嗅いだだけでも肺にダメージを与えることができるってことだ…。はは、惜しかったな、女…」
「…………」
傷ひとつない手のひらには何もつけられていない。
レンは、馬鹿な、と思いながらも一度冷めた頭で考える。
(つまり…、こいつら…、人間じゃないってことか…?)
「もったいねぇが、死ねよ」
式條は不気味に笑いながら、レンの顔に手を伸ばす。
「げほっ、ふざけるなよ…」
いつもの日常の一部だった。
兄とコンビニに向かって買い物をしたいだけだった。
どうしてこんな現実とは程遠い状況に巻き込まれなければならないのか。
会話を聞けばまるで能力の実験に付き合わされたようだ。
レンは息を弾ませ、銀夜と式條を最後の足掻きのように憎々しく睨みつけた。
銀夜と式條は「みっともねぇ」と嘲笑っている。
無様に見えるのだろう。レンは自分の無力さも含めて再び怒りが沸騰した。
(…―――こいつら……ブッ殺してやる!!)
ドクンッ!
レンの心臓の音がひと際跳ね上がる。
パチッ、と真上の電線から火花が飛び散った。
同時に、銀夜が驚いた顔をする。
「! おい、そいつ…!」
「え?」
式條が銀夜に肩越しに振り向いたと同時に血反吐を吐きながら素早く起き上がったレンは、目の前の式條の首を両手でつかんだ。
そして、レンの背後の電柱の電線が漏電を起こし、漏れた電流はのたうちながら引き寄せられるようにレンの体に流れ込む。
付近の住宅とコンビニは停電し、代わりにレンを纏う電流が眩く光った。
(体が、熱い…!)
「ああああああああ!!」
体に流れ込んでくる熱に叫び声を上げ、その場が稲光で包まれる。
そして電線がブツリと音を立てて切れ、再び暗闇が訪れた。
.To be continued