07:嫉妬してる?
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1階にある空き部屋に入ったレンと由良。
レンは部屋に入るなり、目の前にあったテーブルを蹴飛ばした。
由良はその様子をベッドに座りながら呆れた目で眺める。
「ほーら、そうやってキレる……。ヒロセとそんなに変わんねーじゃ…うおっ!」
言い終わる前に、水の入ってないカラの花瓶を由良の顔面目掛けて投げつけた。
由良は間一髪で体を後ろにそらして避けると、目標を失った花瓶は背後にあった壁にぶつかって砕ける。
「仲間があんなケガ負ったんだぞ!! ……あたしも、ついていけばよかったんだ…、クソ!!」
レンは怒りに息を荒くしながら、傍にあった椅子をつかんだままどこかにぶつけたい衝動を抑えようとした。
由良は面倒くさそうに、がしがしと自分の頭を掻く。
「今更、たられば言ってもしょうがねえだろ…。…仲間意識ってやつ? オレのこと迎えに来た時もそうだったけど、おまえにも一応あるんだな」
「…………そんなんじゃ…ない……」
(「たられば」なのは…、わかってるけど…!)
脳裏に再び、水樹の死にざまがフラッシュバックした。
深く息を吐いたあと、ゆっくりとした足取りで部屋のドアに向かう。
その様子に、由良はレンがただ自分の部屋に戻らないことを感じ取った。
「おい、どこ行く気だ?」
声をかけられ、レンはドアノブに手をかけようとした手を止め、背中を向けたまま、由良の質問に答える。
「……叶太輔って奴のとこに行く…」
「勝っつんに休めって言われてんだろ」
「知るか!! テメーだって勝手に行動したくせに指図すんじゃねえよ!!」
「確かに!」
「~~~~っ」
怒鳴り返してくるどころか素直に認められて調子が狂ってしまう。
張り合いもなく、緊張感も霧散し、ため息をついて肩を落とした。
「おまえホントさぁ…。叶太輔を勧誘しようとした挙句に本人から返り討ちにあってケガさせられたのに…。怒ってねえのが意味わからん…」
「あいつはまだまだ伸びしろあるからな! まだあいつを仲間に引き入れる野望は捨ててねーぞ。ヒロセが頷けばすんなりいくってのに、消すなんてもったいねえよ」
由良の目は、太輔の今後が楽しみで仕方ない、と期待で輝いていた。
広瀬のことに関しては口を尖らせ、表情がころころと変わる。
その顔と言葉に、レンに別のいら立ちが生まれ、ピクリと目元が痙攣した。
「こっちはおまえと森尾がケガさせられて怒ってるっつーのに…」
「え。オレのケガのことも怒ってくれてんの?」
「うるせえ! タイスケ、タイスケ、ってテメーのお気に入りだかなんだか知らねえが、連れてきたところであたしがボッコボコにしてやる! その前に森尾が切り刻みそうだけど」
ふと、由良は、「おや?」と意外そうな顔をした。
もしかして、と口にしてみる。
「レン、おまえ嫉妬してる?」
「…………はぁあ゛?」
落ち着いたはずの怒りがぐつぐつと沸き立ってきた。
レンのこめかみにはわかりやすいほど血管が浮き出ている。
由良は遅れて、「あ、これ失言だった」と気づくが、もう遅い。
すでにレンの体から電流がバチバチと音を立てて漏電していたからだ。電流を纏ったレンの体はわずかに発光している。
空気が静電気でピリピリしたことで、さすがに危機感を覚えて額に汗を浮かばせた由良は、その場を離れようと体勢を変えた。
パリーンッ!
由良がシャボン玉で窓を破壊して脱出したのと、レンが部屋中に放電したのはほぼ同時だった。
屋敷の庭に着地した由良は「ピリピリするなよっ」と壊した窓の向こうを見ると、火事になることはなかったが、壊れた窓からは焦げ臭い煙が漏れている。
そこから、ガッ、と破壊された窓枠を片足で踏みつけて身を乗り出すレンは、明らかにキレていた。
両手に持った2つのスタンガンを自らの首筋に当て、バチバチと電流を体に吸収している。
「表に出たな? 今からそのニヤけ面、黒っ焦げにしてやるよ…! 2度とふざけたことヌかさねえようにな…!!」
「…はっ…。キレるっつーことは、図星…ってことじゃねえの?」
由良が返したのは、嘲笑だった。
恐怖どころか、この張り詰めた空気を心底愉しんでいる。
由良は1個のシャボン玉を指の上にのせ、シャボン玉を通してレンと目を合わせて口角を上げて挑発的に舌を出した。
「……いいねぇ。オレもヒマだから相手してやるよ」
楽し気な由良と、憤慨するレンの瞳が、能力者特有の妖しい光を纏った。
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