07:もう一度、宴を
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バギーは切り離した両手でルビーの胸倉をつかんだ。
「見習い!! お前…っ!!」
「ごめん」
怒り心頭のバギーに対し、ルビーは苦笑を浮かべていた。
「プフフフ!! プーッフフフフ!!」
鍵を拾ったパッローネは興奮しながら笑っていた。
ルビーは見据えながら声を上げる。
「鍵はアンタの物! だから、みんなを解放して!」
「「「「「見習い~~~~っ!!」」」」」」
「おれ達の為に~~~っ!!」
どばーっと涙を流すバギー海賊団全船員。
「動くんじゃねェ! 中身の確認だ!!」
鋭い声と共に手で制したパッローネは、手元に置いていた宝箱を取り、待ちきれないといった様子で鍵穴に銀色の鍵を差し込んだ。
全員がそちらに釘付けになる。
カチッ、という音に伴い、固く閉じられていた宝箱の蓋が開かれた。
中身が今、取り出される。
「お…、おおお…っ。これが…“アルバヴィーノ”…!!」
聖遺物の如く掲げられたのは、コルクで封をされた黒のワインボトルだ。
中身は見えないが、ちゃぷちゃぷと液体の音がする。
「あれが伝説の酒か…!!」
バギーは凝視しながら言った。
「…足りない」
「?」
ルビーのこぼした一言に怪訝な顔を向け、「何がだ?」と尋ねる前にパッローネの声に遮られる。
「お前らはそこで唾を飲みながら、おれが待ち望んだ至福のひと時を見物してろ!」
パッローネは急いでクルーにワイングラスを持ってこさせ、待ちきれない様子でコルクを開けて中身を注いだ。
ボトルから透明のグラスに移された液体の色は、赤みもない不気味な黒だ。
「あ、ああ…っ。先生…! 先生!! おれは…、ついにやりました…!!」
感極まってそこにいない誰かに語りかけるパッローネの言葉に、「先生?」とルビーは目を細める。
「海賊時代に、乾杯!!」
パッローネはワイングラスを高らかに夜空に掲げたあと、口をつけ、黒を誘う。
瞬間、
「ブボフッ!!!」
盛大に噴き出した。
「「「「「!!!!???」」」」」
全員が何事かと目を剥く。
パリン、とワイングラスがパッローネの手から滑り落ちて割れた。
「がはっ、げほげほっ。何…だ、これは…!? お前ら…ッ、何を入れやがった!!?」
パッローネは喉を押さえ、口端から黒の液体を垂らしながら咳き込み、バギー達を睨んだ。
宝箱の中身を奪われた挙句に言いがかりをつけられ、バギーも睨み返して否定する。
「入れるどころか宝箱すら開けてねーよ! お前が何言ってんだ!?」
パッローネの目は血走っていた。
片手に握りしめたワインボトルに視線を落とし、自身の自慢の舌が示した受け入れがたい事実に、首を横に振るばかりだ。
「こんなものが…伝説の酒であっていいはずがねェ…!! こんな、付け焼刃でつくったかのような即席の酒が…っ! クソッ!「酒」と呼ぶのも愚かしい!! 失敗作以下どころか、一度開けた痕跡もある! 飲みかけだぞ!! うううううっ!!」
激昂するままに、唸りながらボトルを振りかぶる。
「やめろ…」
眺めていたルビーは、小さく呟き、手を伸ばそうとした。
「ふっざけんなあああああああ!!!」
バリンッ!!
勢いよく振り下ろされたボトルは、中身がまだ入っているにも構わず甲板に叩きつけられた。
粉々に飛び散る黒いガラスの破片。
黒い液体は血溜まりみたいに床に拡がっていく。
「本当はどこかに隠してるんだろ!!? 言え!!!」
憤怒と興奮が鎮まることはなく、パッローネはバギーに向かって怒鳴った。
「知るか!! ヤロウ、勝手にブチ切れやがっ…」
ふと、バギーの視線がルビーの横顔をとらえた瞬間、ぞくりと肌が粟立った。
(あ…)
「……………」
眉間にわずかに皺を寄せたルビーの、燃えるような赤い瞳が、パッローネを鋭く射抜いていたからだ。
その周りの空気は、ちりちりと音を立てて焦げているようだ。
静かだが、確実に激怒しているのがわかった。
(―――知ってるぞ…、この目…)
バギーの脳裏に浮かびあがった記憶の欠片は、殺気立った赤い瞳を見せた。
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