06:死んで守った
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
酒場の町であるドランクリゾートから離れた無人島―――『ウーヴァ島』。
島の片隅の砂浜には、『ドランクリゾート』から運ばれてくる漂流物が集まっていた。
海に捨てられた酒瓶などのガラスの破片が、時間をかけて潮の流れに乗り、砕け、波によって丸く削られて打ち上げられた成れの果て。
様々な色のガラスが砂浜に混じり、この一角は『グラスビーチ』と名付けられた。
陽が昇れば、この砂浜に混ざったガラスが反射してキラキラと輝くのだ。
今は夕陽の光に照らされ、オレンジ色にキラキラと反射する砂浜。
「きれーだなぁ」
「見習いーっ!! 何見惚れてんだ!! いくぞコラァ!!」
目を奪われるルビーを叱咤するバギー。
はっと現状を思い出したルビーは「わかったわかった」と慌てて切り替えた。
「せー!!」
「のっ!!」
「「んぎぎぃ~~~~っ!!!」」
歯を食いしばり、バギーとルビーは互いに反対の方向へ足を進めようとした。
パッローネのガムでくっついた互いの体を引き剥がすために。
「もっと気張れコラァ!!」
「やってるって!!」
多少は伸びるが剥がれる気配はない。
思った以上の粘着力に驚かされる。
「せんちょ、これにしがみついて」
近くにあった適当なヤシの木を見つけ、バギーをしがみつかせる。
右腕はルビーの背中にくっついているので、左腕と両脚を引っかけた。
「もういっちょ!!」
「せー!!」
「のっ!!」
掛け声とともに、今度はルビーが力を入れて引き剥がそうとする。
「うおりゃあああ!!!」
バキッ、とヤシの木がへし折れ、バギーとルビーは叫びながらヤシの木の下敷きとなる。
少しして、ヤシの木がダメならば、と岩にしがみついて試してみたが、今度はバギーが力負けしてしまった。
ガムが伸びきったところでバギーが岩から手を離したことで、バチンッ、とぶつかる2人。
衝突と同時に、バギーの体がくっついていない部分だけバラバラに散らばった。
「ムリ!! 最悪にムリなんだけど!!」
「ハデに腹立ってきた!! あんのプフフデブがーっ!!」
悪党顔のパッローネの顔が頭の中でチラつき、バギーとルビーは自身の頭をがしがしと掻き毟った。
ナイフで切れないことも、銃で破くことも無理なのは、すでに襲われたクルー達で実証済みだ。
力技でも無理ならば成す術がない。
素手で触るなんてもってのほかだ。
「そうだ、せんちょ! バラバラになれば…」
「どこをだ!!?」
「えーと…?」
提案を出した方も出された方も困る。
やれることはやりつくした。
結果、体に張り付いたガムは剥がせず、体力だけが消耗された。
「………みんな待ってるし、このまま行くしかないよ…」
「チッ」
大きな舌打ちが出た。
パッローネの思惑通りに動かなければならないのが癪に障る。
カバジたちを人質に取ったパッローネの要求はただ一つ、“アルバヴィーノ(夜明けの美酒)”のワインケースを開ける鍵だ。
知らなかったとはいえ、コルク抜きのようなバネ型のペンダントが鍵で、今はルビーの胸元で光っている。
「せーの」の掛け声で立ち上がり、バギーとルビーは森の中へと足を踏み入れた。
「ロクなことがねェ」
「海賊やっててロクなこと起こらないわけないと思うけど」
「知ったふうに言うんじゃねえよ、見習いのクセに」
「指で顔つつかないでクダサーイ」
バギーはなるべく危険な事に足を突っ込まず、手っ取り早く物事を済ませたいのだ。
少しむくれたルビーは、「どうせ見習いよ」とぼやく。
フン、と鼻を鳴らした2人は、目も合わせず先を進んだ。
お互いの心を表すように歩調も合わず、たまに転んでは起き上がり、パッローネたちを追う。
行く手を阻むようにある茂みが鬱陶しく、バギーは持っている手持ちのナイフで枝や草を切り、道を開いた。
ゆっくりと夜が迫ってくる。
のんびり歩いてはいられない。
初めての島で、何が生息してるのかもわからないのだ。
「……待て」
目つきを鋭くさせたバギーが動きを止める。
つんのめったルビーは「何?」と辺りを警戒した。
「……………」
バギーの表情は真剣だ。
ルビーは感覚を研ぎ澄ませてみるが、不気味なくらい辺りは静かだ。
土を踏む音も、獣の唸り声も聞こえない。
バギーは何を感じ取っているのか、ルビーはバギーの反応を窺った。
そして、バギーはおそるおそる口を開いた。
その顔には汗が伝っている。
「……トイレ行きてぇ」
「させるかッ!!!」
とんでもない発言につっこみ、近くの木の枝で休んでいた野鳥が驚いて一斉に飛び去った。
「この非常時に!!?」
「仕方ねえだろ!! 急にくるもんなんだぞ!!」
「今はやめて!! この状況で!! 全部解決するまでガマンできない!!?」
嫌でも引っ付いたままバギーの用足しに付き合わなければならないのだ。
「ムリムリ。も~、出る」
ガマンのあまり、顔色の悪い顔面に汗を浮かばせ、ズボンに手をかけるバギー。
「!!! ストップ!! うそ!!? せんちょ、ストップ!! ストップ―――ッッッ!!!」
.