05:名前で呼んで!
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ビックトップ号は無事に嵐を乗り切った。
船体もほぼ無傷で、帆ももってくれた。
人数が多いおかげもある。
甲板には疲れ切ったバギーとクルー達がいた。
温かい風が吹き、先程の嵐が嘘のようだ。
波も穏やかさを取り戻している。
「あの見習い、嵐に流されたんじゃ…」
アルビダが、過ぎ去った嵐に振り返った。
クルー達も心配そうに、中には泣きそうなクルーまで嵐を眺める。
「そんなァ~」
「うぅ。見習い~~」
バギーも欄干に近づいて嵐を見つめた。
「暗ェ顔すんじゃねーよ。夢を追いかけて死ねるなら、見習いも本望だったろう…。おめェら、せめてハデに見習いの葬式を…」
ザバァ!!
「ぎゃああああああ!!!!」
「「「「「出たァあああああああああ!!!!」」」」」
突如目の前に出てきた海藻まみれのルビーに、目玉が飛び出て一斉におったまげるバギーたち。
「最高に生きてるよ」
両脇に抱えた樽を置き、邪魔だというように頭の海藻を、びしゃっ、と甲板に叩きつける。
「死んだと思ったぞ!」
びっくりして尻もちをついたバギーが、幽霊でも見るようにルビーを指差した。
「溺れはしないけど、危うく船を見失って迷子になるとこだった…」
焦りを思い返して苦笑してしまう。
「待て。どこから持ってきたんだ? その樽」
モージが尋ねると、よくぞ聞いてくれました、とルビーの口元がニヤリと笑った。
「沈没船」
「な、なんだとォ!!?」
モージを横から押しのけて食いついたのはバギーだ。
「嵐の海に翻弄されてたら、偶然。海底に沈んでたのを発見した」
「なるほどね。あそこは大昔からの悪天候スポットだ。あってもおかしくはないね」
アルビダが納得するように呟き、言葉を続けた。
「でも、その沈没船が海図の宝なんて証拠には…」
「他の沈没船はいくつかあったんだけど、見てこれ!!」
その言葉も待っていたのか、アルビダの言葉を遮るようにルビーは嬉しそうに酒だるを指差した。
そこにはあるマークが描かれている。
注目し、「あ!!」と声を上げた。
赤で『×』のマークが描かれてあったのだ。
探しているお宝の可能性が大きくなり、バギーは「よっしゃァ~~~!!」と踊りだしてもおかしくないほどテンションとコブシを上げた。
「待ってくださいバギー船長! だったら、また嵐の中に戻らないといけないんですよ!?」
カバジの言葉に、誰もがゾッとした。
またあの暴風雨の中に戻らなければならないのだ。
目的が沈没船ならば、サルベージは避けられず、ましてや、嵐の中なら普通の人間が行えばこちらが沈没船になるだろう。
ルビーひとりでは時間がかかる上、ずっと危険な場所で待っていることもできない、と誰もが考える。
「う~~~む」
宝は欲しいが、“グランドライン”に入りたての状態で船も出来れば負担をかけたくはない。
どうしたものかとバギー達が頭を抱えていると、ルビーは驚くべき発言をする。
「あー。大丈夫。すぐ下まで持ってきたから」
「持ってきた? 何を?」
「だから、沈没船」
そう言って人差し指を下にさす。
「は?」
「「「「「何ィィイイイイイイイ!!!??」」」」」
嵐の中だったので、沈没船を発見したルビーは、少し考えてからバギーの船の傍まで運ぶことを思いついた。
やり方は至って単純。
ただの力技だ。
船体を下から持ち上げ、ビックトップ号のほぼ真下まで運んできたのだ。
「一度は海面に浮かせようと思ったけど、中に海水が入ってたから持ち上げにくくて。あ、でも、急ぎながらも慎重に持ってきた方だよ」
「あんた本当に何者なんだい…」
話が事実ならば、普通の人魚では不可能なことをやり遂げていることになる。
だが、バギーにとってはどうでもいいことだ。
「お宝はこの下なんだな!?」
「うん。証拠に、適当に船にあったもの持ってきた」
それが両脇に抱えてきた樽だ。
カバジとモージはまじまじと見ている。
「見たところ、酒だるのようだな」
「さすがに海水に浸かってたら飲めねェだろ」
「まだまだ、船の中にはいろいろあったみたい」
「よォーし!! じゃんじゃん運んでこいっ!!」
「りょーかい!! せんちょ!!」
人魚の足のままのルビーは再び海へと飛び込んだ。
「じゃああたし運ぶから、頑張って受け取ってー!」
海面に潜る前に、ルビーはバギー達にそう言い残していった。
「頑張って?」とカバジ。
「受け取って?」とモージ。
意味がとらえられない発言に、一同は「?」を浮かべ、首を傾げるだけだ。
沈没船はビックトップ号より小さく、船乗りも数人乗れるか乗れないかの広さだ。
中は完全に海水で満たされ、壊れた家具や、触れれば散り散りになりそうな本があった。
壊れたドアから入ったルビーは、とりあえず運べるだけ運ぼうと適当に手をつかんでは海面付近へと戻った。
覗き込んでいるバギー達は、ルビーの戻りを待っているだけだ。
海面の下から影が見えた。
「お。見えてき…」
バギーが身を乗り出すと、海面から何かが飛び出してきた。
「!!?」
ルビーではなく、沈没船の中にあったものだ。
またしても酒だるだが、何がお宝かはわからない。
思わず上半身を切り離したバギーは、空中でそれを受け止めた。
「おおおお!!?」
続けて海面から色んなものが打ち上げ花火のように飛び出してくる。
バギーは視界で捉え、下にいるクルー達に叫んだ。
「おめェら絶対ハデに落とすなァ―――っっ!!!」
「うわ!!」
「ひっ!!」
甲板に落下する前に、身軽なクルー達が受け取めていく。
わざわざ甲板に上がって荷物を置くのが面倒だと思ったルビーは、投げ渡すことを思いついたようだ。
「「「「「投げるなァ!!! 丁寧に扱えェ―――っ!!!」」」」」
全員声を上げて注意する。
またしても海面から何か飛んできた。
上半身だけ宙に浮かんでいるバギーはそれを抱きしめるようにキャッチする。
「ったく今度はなんだ、あのハデア…骨ェェェ―――っっっ!!!?」
投げられたのは人骨だ。
「ぎゃあああ」と人骨を抱えたままパニックになった。
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