03:見習いだからね
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結果は、バギー一味の圧倒的勝利だ。
奇襲のつもりだった敵船も、近づけばビックトップ号より小さく、“グランドライン”の入口だからとバギー達を侮ったのだろう。
船に積み込まれていた少量の全財産を奪われ、身ぐるみも剥がされ、「調子に乗ってすみませんでした」と土下座してからボロボロに変わり果てた船で逃げ去った。
夜は訪れたばかり。
宴には好都合な時間帯だ。
用意されていた料理は次々に甲板に運ばれ、メニューもどんどん追加されて酒のビンも開けられていく。
「おれ達バギー海賊団の勝利に~~~っ!!」
「「「「「カンパ―――イっっっ!!!」」」」」
「“グランドライン”入りで小遣い稼ぎもできた!! すげェ見習いも入った!! ってことで、改めて見習いをハデに歓迎しろおおおっ!!! 宴だァ―――っっ!!!」
「「「「「うおおおおおっ!!!」」」」」
「見習い万歳!!!」
「掃除もできるうえに、あんな見事な空中曲技ショーまで見せてくれやがって!!!」
「こっちきて飲み競べしようぜェ!!」
クルー達に背を押され、無理やりジョッキ一杯の酒を手渡されたルビーは、そのまま飲み競べに参加させられそうになる。
「ごめーん! あたしお酒飲めないっ!」
「「「「「え~~~!!?」」」」」
申し訳なさそうに頭を下げてジョッキを返し、クルー達の興が醒めてしまわないように、代わりに手拍子と打ち鳴らされる楽器に合わせて踊りを披露する。
軽快なステップを踏みながらくるくると回り、楽しげに笑った。
「いいぞォ!!」
「踊れ踊れーっ」
「…?」
酒を片手に盛り上がっていたバギーは、何か引っ掛かりを感じていた。
脳裏に一瞬浮かんだのは、絶壁の傍で月明かりを背に踊る、少女の姿だ。
しばらくして、クルー達の大半が眠ったころ、踊り切って満足しているルビーはケラケラと笑いながら、バギーの元へとやってきた。
足下は気分よくスキップしている。
「楽しそうだな見習い!! 飲めねーとはハデに残念だぜ」
「いつか飲めるようになるから」
そう言いながら皿から適当に骨付き肉を奪うと、美味しそうに噛み千切って頬張った。
「!」
大人しく飲んでいたアルビダは違和感を感じた。
(人魚って、肉と魚は食べないって聞いてたけどね…)
ルビーが何者なのか疑問が募るばかりだ。
ゆっくりと考えたいところだが、周りがバカ騒ぎしていて集中できない。
「こんなに楽しいの久しぶり」
「まァ、座れよ」
上機嫌なバギーは向かい側に座らせた。
互いのジョッキをぶつけ合い、「カンパイ」と2人で祝う。
酒の飲めないルビーの持つジョッキの中はジンジャエールだ。
酒が飲めずとも上機嫌なルビーは自然と鼻歌をうたう。
「あ? その曲…」
バギーは、聞き覚えのあるメロディーを拾った。
ルビーはへらへらと笑いながら言う。
「昔、バギーせんちょが教えてくれた」
「おれが…教えた?」
バギーは思い出そうとするが、記憶の欠片さえ出てこない。
ルビーが踊っている時によみがえった記憶も、モヤがかかっているようなもので、はっきりと思い出すことができなかった。
「……“ビンクスの酒”と言ってな…」
今も昔も宴でよく歌ったものだ。
「せんちょ、みんな寝てるから代わりにあたしが見張っとく!」
「ってコラァ!!」
教えようとしたところで、ルビーはいつの間にか見張り台へとのぼる縄はしごに移動していた。
「続きは今度教えて!」
そう言ってバギーに手を振ってさっさと上がっていく。
「何て勝手な見習いだ」
ため息をついたバギーは、頬杖をついて呆れた顔で、見張り台へと続く縄はしごをのぼるルビーの背中を見つめた。
「そうか、あいつの雰囲気、誰かに似てると思ったら…」
(シャンクスと麦わらに……)
目を覆い、湧いてきた苦い思い出と共に酒を飲み下した。
「ハデに何者だよ…」
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