03:見習いだからね
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バギー海賊団の一員となった、セイル・G・ルビー。
本人の希望で、海賊見習いとしてビッグトップ号で働いていた。
着替えまで提供してくれて、上機嫌に鼻歌を歌いながら作業に没頭している。
デッキブラシで、甲板や廊下や各部屋の床を順番に磨いていく。
「見習いー、あとで洗濯も頼んだぜー」
「はーい。こっちも、もー終わるんで」
「見習い、武器の手入れも任せていいか?」
「洗濯が先に終わってからでいいー?」
次々と追加される仕事に嫌な顔ひとつしない、見習いの鑑といえる。
甲板の指定席の椅子に座るバギーと、ソファーに座るアルビダはそれを目の端で確認していた。
ルビーの仲間入りに不満がある様子で、肘掛けに頬杖をつき、せっせと働くルビーの背中を見つめてから、じろりとバギーに視線を移した。
「あんた、うまく言い包められてなあなあになっちまったけど、結局、あの女とはどういう関係なのさ。まさか本当に昔の女とかじゃないだろうね?」
「アホ言ってんじゃねえよ」
「仲間にしておいて大丈夫なのかい? 巻き添えはごめんだよ。それにおかしな話だと思わない? アタシも人魚は初めて見るけど、人間の脚をもつ人魚なんて聞いたこともない。生まれた時から魚の脚のはず…」
自身の意思によって人間の脚から人魚の脚になってしまう、なんておかしな話はない。
文献に目を通したこともあるアルビダは、船員の誰よりもルビーを警戒しているが、バギーは呑気に昼間から酒ビンに口をつけている。
「おれ様の役に立つ仲間なら大歓迎だ。人魚なら、海底のお宝も取り放題だからな。それをぜーんぶおれにくれるってんだぜ? 深海に眠る“グランドライン”のお宝はぜーんぶ…」
金銀財宝に埋もれる自身を想像しているのか、口元が露骨ににやついていて、傍から見ても頭の中が透けて見える。
「ぎゃははははは!!」
「呆れちまうほどちょろい男だね」
乗る船を間違えたか、とアルビダは小さく後悔した。
危険な海の入口で早速トラブルに巻き込まれたりと、長生きできる気がせず、これからの行く末を案じてしまう。
(他の連中も絆されすぎだよ…)
ルビーにブラッシングしてもらったリッチーは、ツヤツヤの毛並を満足げにモージに見せつけている。
「ガウ♪」
「おれがしてるときより幸せそうだな」
一方、カバジは、ルビーに手入れを任せて戻ってきた愛刀の輝きに感心していた。
「見事…」
鏡のように磨かれていた。
アルビダはあきれ果てて空を見上げる。
それから立ち上がり、重い足どりで部屋へと向かった。
「どこ行くんだ?」
「自分の部屋に戻ってる…。言っとくけど、アタシはあんた達より信用してるわけじゃないから」
それだけ言い残し、バギー達に背を向けて行ってしまった。
「疑り深い奴だな」
バギーはアルビダの背中を見送りながら呟いた。
クルーたちも同じく見送るが、とある談義が開かれる。
「なぁ、アルビダ姉さんと、見習い、どっち派だ?」
「バカ言ってんじゃねえ。断然、アルビダ姉さんに決まってんだろ」
「うーん。おれは見習い派だな。一途であれはいい嫁になる」
「いやいや、やっぱ女は見た目だって。姉さんのプロポーションに適う女なんてそうそういねーぞ」
「見習いは人魚だぞ! あの美しい脚を見たろ! 神秘的でおれは見習いを推す!!」
「ふざけんな!! てめー前までアルビダ姉さん派だったじゃねえか!!」
「おれはどっちかっていうと、明るい活発な女が好みなんだ!! そもそも、船に女っつったら姉さんしかいなかったし…」
「バカ野郎!! 見損なったぞ!! 確かに見習いはカワイイが…」
「カワイイで十分じゃねえか!!」
「美女よりカワイイほうが…」
「美女がいいに決まってんだろ!!」
なぜか勝手に仲間割れを始めている。
聞いていたバギーはくだらない言い争いに苛立ちを募らせた。
「女に鼻の下伸ばすなァ!! 持ち場に戻れハデアホ共!!!」
「船長!!」
「船長は姉さんと見習い、どっち派ですか!!?」
「知らんわっ!!!」
ついにバギー玉を撃って黙らせた。
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