02:みたいなもの?
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「人魚!?」
「初めて見た!!!」
「本当にいたんだ!!」
「なんてキレーな鱗なんだ!!」
褒められたルビーは顔を赤くする。
「さ、最高に照れるからやめて…」
「照れたぞ!!」
「カワイイな!!」
「なぁ、その赤い鱗、よく見せてくれ!!」
「誰の赤い鼻をよく見たいってェ!!?」
聞き間違えてバギーが勢いよく起き上がる。
「バギー船長!!」
「意識が戻りましたか!!」
「あ? おれ、海に落ちたはずじゃ…」
溺れたあとのことが記憶から抜け落ちている。
「この人魚が助けてくれたんですよ!!」
「命の恩人だ!!!」
「人魚っててめェら何を寝惚け…って何だその足!!?」
クルー達より遅れてルビーの尾に驚愕した。
尾の鱗は剥がれ落ちて潮風に吹かれて花びらのように海へと舞い、元の人間の足へと戻る。
足の尾ひれも、元の足の形へと戻り、そこでようやくルビーが立ち上がった。
元に戻るまで1分もかからなかった。
「ごめんごめん、驚いた?」
いたずらっぽく笑うルビーに、未だに荒く呼吸を繰り返すバギーが尋ねる。
「人魚……。いや、この際どうだっていい。どうしておれを助けた?」
投げられた質問に、ルビーは笑みを浮かべたまま答えた。
「どうして探し人を見殺しにしなきゃいけないの」
「だから!! なんでおれ様を探してんだって聞いてんだ!! ファンか!?」
「だから!! それは…」
まだわからんのか、と呆れる。
「はっ!! まさか、船長の、コレ!!?」
勘ぐったクルーのひとりが小指を立てた。
バギーの女かもしれないとどよめくクルー達。
「ん? うん。そうソレ」
小指に視線を移したルビーは、あっさりと頷いた。
「「「「「えええええええ!!!!??」」」」」
船が飛び上がるほどクルー達が驚いた。
なぜかその中にバギーも混じっている。
「へぇ。そういう女が好みだったのかい」
「どうりで、アタシにあんまりなびかないわけだ」と言葉を続けて納得したアルビダ。
「てめェまで何言い出してんだ、アルビダァ!!」
「てことで、責任取って」
「デタラメ言ってんじゃねェぞウラァア!!!」
パンッ、と切り離した右手でルビーの頭を叩いた。
ルビーは「痛いなぁもー」と頭を両手で押さえて顔をしかめ、小指を立てる。
「約束…の事じゃないの?」
てっきり、約束げんまんの小指のことかと勘違いしていた。
「や、約束?」
ハテナをいくつも頭上に浮かべるバギーに、ルビーはがっくりと肩を落とした。
「『おれの海賊団に入れてやる』って。…随分前だから覚えてないのも無理ないけど」
つまり、ルビーが乗り込んできた理由は、バギー一味入団の志願だ。
バギー達はようやく意図を呑み込む。
「船長! そんな約束を!?」
「いいじゃないですか?」
「女が増えるっ!!」
「カワイイし!!」
「そう!! カワイイし!!」
「“バラバラパーンチ”!!」
ふざけた賛成意見する者を切り離した両手で順番に殴りつける。
吹っ飛んだクルーは船の隅に転がった。
「どこの馬の骨とも知れねえ女を入れる気はねェ。そもそもおれに人魚の知り合いなんていないしな!! いつ約束したか言ってみろ!! おれが思い出すことが出来れば…」
「“オーロ・ジャクソン号”で見習いしてた時に…」
「あ゛―――っっ!!」
その発言を遮るように慌ててルビーの口を塞いだ。
クルー達は何事かと小首を傾げる。
バギーはルビーの肩をつかんで一緒にクルーに背を向け、険しい表情を浮かべて声を潜めた。
「貴様、なぜそれを…!!」
「見習い時代に会ってるって言ってんの。シャンクス元気?」
懐かしい名前に動揺で体が大きく震える。
「シャン…ッ!? 赤髪のことまで…。………いやいやちょっと待て。見習い時代って、もう20年以上前のことだぞ。てめェ、年いくつだ?」
ルビーの見た目は、お世辞を抜いても10代後半か20代前半くらいだ。
会っていても、ルビーが物心つく前ということだろう。
バギーがルビーのことを覚えていても、ルビーがバギーのことを覚えているのは不自然だ。
ルビーは、どうでもよさそうに頭を指先で掻く。
「年なんてどうでもいいじゃない」
「なにィ?」
「……思い出せなかったらそれでもいいや。でも、約束は守ってもらうから。全世界に過去バラされたくなきゃ、あたしを仲間入れて」
そう言っていつの間にか悪魔の笑みに変貌している。
「は!? ふざけんじゃねェ―――っ!!」
突然の脅しにバギーが怒鳴り散らす。
再び見せた怒りにクルー達がマストの後ろに隠れた。
助けてもらったからと言って義理立てするバギーではない。
それは一味全員が重々承知していた。
「追い出してもバラす。死んでもバラす。その気になったら今バラす。最大にバラす」
「ハデにやめんかコラァ!!!」
「バラす」の発言だけ下から順番にバギーの体がバラバラになった。
反応を窺ったルビーは「なるほど」と察する。
「海賊王の元・クルーってだけでも大ごとだし、政府にも目をつけられるからずっと東の海にいたの? ビビり?」
「ほっとけ!! いちいち一言多いんだよさっきから!!! てめェなんざ、絶対に仲間に…」
「まぁ聞いてってば。あたしを仲間にする価値は…、最大にあると思うけど?」
今度はルビーがバギーの肩に腕を回した。
「どういう事だ?」
バギーがピクリと反応したのを見逃さず、巧妙に声色を変えて話を続ける。
「バギーは能力者だから、海に潜れない。船員はほぼ全員普通の人間だけど、潜水に限界がある。ましてやここは海賊も怖がる危険な海。度胸もいつまで続くかわからない。海底に沈んだ、宝をのせた沈没船も泣く泣く諦めるしかない。…でも、人魚のあたしがいれば?」
「……………」
「バギーの命令一つで取ってきてあげる。お宝」
「おまえの分け前は…」
「あはは、何それ。いらなーい。ぜぇんぶあげる!!」
くるり、とバギーとルビーはクルー達に振り返った。
先程の険悪な雰囲気はどこへ行ったのか、どちらも満面の笑みで肩を組み合っている。
「ヤロウ共ォ!! 喜べェ!! 新しい仲間だァ―――っっ!!!」
「「「「「うおおおおお!!!」」」」」
交渉成立で話も解決してバギーの機嫌も一気に直り、新たな船員の入団にクルー達は歓声を上げた。
隠れていたマストの後ろからこちらに駆けつけて来て、ルビーを歓迎する。
「2度目の自己紹介になるけど、あたしは、セイル・G・ルビー!! 覚えた? 最高によろしく!! バギーも…」
「おれのことは船長と呼べぃ!!」
「りょーかい!! せんちょ!!」
こうして、目的通り、ルビーはバギー一味の仲間入りを果たした。
“グランドライン”の航海も始まったばかり。
本当の長旅はここからだ。
.To be continued