12:There's different types of…
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11月20日火曜日、午後22時。
一夜を明かし、出直してきた夜戸達が訪れたのは、落合が連れ去られた路地だ。
奥へと進み、ある場所で止まる。
足立、夜戸、ツクモ、森尾、姉川、この5人が囲むように立っている中央には、マンホールがある。
「地下…」
夜戸は片膝をつき、マンホールの蓋に触れた。
「そ。上がダメなら下ってね」
足立も腰を落とす。
「なるほどさ~」
「盲点だった…。腹立つわー」
出しぬかれていた思いに包まれ、姉川は額に青筋を浮かべてマンホールを睨みつけた。
「まあまあ、絶対にここって決まったわけじゃないけどね。でも、ここで違ってたら本当の本当にお手上げ」
足立は両手を小さく上げる。
落合とカバネの居場所は闇の中に消えてしまう。
「開けますか」
「ん」
足立と夜戸は協力して、重そうな鉄のマンホールを開けようとした。
「俺がやる」
名乗り出たのは森尾だ。
2人を下がらせ、右手のひらの赤い傷痕からバールを取り出し、振り上げた。
「うらぁ!!」
バリンッ!
一気にバールを振り下ろすと、マンホールの蓋はたちまち凍りつき、粉々に砕けて真下へ落下した。
ボチャボチャ、と下から水しぶきの音が聞こえる。
「わー。ハデ。…でもこれいいの?」
足立はツクモに尋ねた。
ツクモは怒りを露わに飛び跳ねる。
「いいわけないさ! あとで直すツクモの身にもなってほしいさ!」
現実に影響が出ないように修正しなければならない。
現実の見知らぬ人がマンホールの蓋が開いていることに気付かず落ちてしまうかもしれない。
「やかましいな。こっちの方が手っ取り早ぇだろ」
「アタシハナニモミテマセン」
躊躇なく壊した森尾に目をつぶる夜戸。
「あははっ。なんですかそれ!」
ウケる姉川。
「行くの? 行かないの?」
呆れる足立に、姉川は笑いの余韻を残しながら「はいはい。まずはウチが調べてみる」とクラミツハを召喚し、レンズの目の水魚たちを先にマンホールに放つ。
それから水魚の視界を通じ、ゴーグルで辺りを探った。
「降りたところには何もないようだけど…。遠くにシャドウの反応をキャッチ」
そうでなくては、と足立は腰を上げる。
「先に俺が行く」
言ってすぐに、森尾が鉄梯子を伝って、果敢に下へと降りていった。
カン、カン、と靴と鉄梯子が接触するたびに響き渡る。
「じゃあ次、僕ね」
「ツクモも行くさー」
「華ちゃん、一応前方にも気を配って」
「了解でーす」
森尾に続き、足立、ツクモ、夜戸、姉川の順番でマンホールから下水道へと降りていく。
「アダッチー、手は絶対放さないでほしいさっ」
ツクモは足立の頭に載っていた。
「わかったから目は隠さないで」
頭の重みに耐えながら、足立は慎重に鉄梯子を伝って降りる。
「スカートじゃなくて正解ですね」
「スカート?」
夜戸は、なぜ、と疑問を浮かべたが、足立は遠回しに言った。
「2人がそんなカッコしても、僕、今見えないよ」
地下に到着する。
脇の水路には水が静かに流れていた。
トコヨだからなのか、マンホールに入る前に覚悟していた、吐き気を催すような汚水の匂いはない。
足立が石造りの床に足をつけると、ツクモは足立の頭から飛び降りて着地し、気配を探った。
「ホントさ…。ここに来て、やっと気配が感じられるさ…」
クラミツハほど具体的ではないが、ツクモも侵入者やシャドウの気配は察知することができる。
夜戸も鉄梯子を下り、姉川も上を確認してから足をつけ、手をパンパンと叩いた。
「下水道って、ホラーゲームとかでよく出てくるよねぇ。ここがアジトなら、いい趣味してるわ」
「ずっと心霊スポットみたいなビルをアジトにしてたお前に言われなくねーよ」
ホラーゲーム、のワードにビビりながらも、森尾がツッコんだ。
「SFホラーであったっけ。水路からエイリアンが飛び出して襲いかかるの」
「やめろ。マジ。やめろ!」
ニヤつく姉川の言葉に、うっかり想像した森尾は耳を塞いだ。
「森尾君をいじめてる場合じゃないでしょ。わかるけど。迷路みたいな場所を、どう攻略していくか考えないとさぁ…」
足立は自分で、攻略、と口に出してしまってから、姉川の、ホラーゲーム、の言葉に感化されたことに途中で気付く。
「たとえば、あの道みたいな?」
夜戸が指をさした先には、Yの字に分かれた道があった。
姉川はクラミツハの水魚をどちらの道にも放つ。
「……どっちもシャドウの気配がするし…、それ以外の気配も……」
姉川は眉をひそめる。
ギリギリの距離で探知したことだ。
どちらがハズレかははっきりしない。
そこで足立は提案を出した。
「二手に分かれてみる?」
「3と2に分かれてしまいますけど…」
「まあ、ひとつひとつ見て回るよりか、効率はいいよな」
「どう分ける?」
「ツクモちゃんと姉川さんは別にした方がいいと思う。2人とも、シャドウやペルソナ使いの気配はわかるわけだから…」
「じゃあ、あたしと、足立さんと、森尾君でどっちに行くか決めますか」
話し合いの結果、ペルソナと探知型のバランスを見て、足立・姉川の班、夜戸・森尾・ツクモの班に決定した。
「足立班は右の道、夜戸班は左の道でいい?」
「はい。お気をつけて」
「夜戸さんもね」
「ツクモとハナっちが探知するんだから、ツクモ班と姉川班呼びがいいさ~」
「ウチは、年上2人が先頭の方が安心する」
「え~~~」
ツクモは同意してくれなかった姉川に頬を膨らませる。
「それじゃ…」
「足立」
一歩踏み出す前に、森尾が呼び止めた。
「ん?」
「…昨日はカッとなって酷いこと言っちまって…、悪かった」
「なになに、どうしたの急に。別に気にしてないよ?」
改まって謝る森尾に、足立は戸惑い混じりの笑みを浮かべる。
「…ここを見つけたのはお前だ。俺はまた、カラ回りするとこだったんだ。本当…、何て言っていいのか…。お前には世話になりっぱなしで」
「そういうのは、落合君を見つけてからゆっくり聞くから」
うまく言葉が出てこない森尾に対し、足立は肩を軽く叩いた。
「……ああ。…頼む」
森尾が頭を下げると、足立は背を向けて手を挙げ、「先に行くよ」と姉川と一緒に右の道へと進む。
「…森尾君、あたし達も行こう。こっちの道に、空君がいるかもしれないし」
「…はい」
「レッツらゴーさ~」
張り切るツクモを先頭に、夜戸と森尾も左の道へと進んだ。
互いの道から響く足音が、だんだんと遠くなっていく。
二手に分かれた道のどちらかに、傍観者となって笑みを浮かべる者がいることは、一行はまだ知る由もない。
.To be continued