12:There's different types of…
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11月17日土曜日、午後22時。
足立、夜戸、森尾の3人はカウンターチェアに座りながら、広げた地図と睨めっこしていた。
「トコヨエリアをほとんど回ってみたけど、成果はほとんど出ないねぇ」
相変わらず『カバネ』は隠れたままだ。
森尾は露骨に苛立って頭を掻く。
「全然尻尾見せねぇくせに、今日も磔事件とか毒ガス事件とか起こったわけだろ? いい加減にしてくれよ」
「お父さんの方は?」
「こちらも、何も見つかってません…」
夜戸の視線がカウンターバーに落とされた。
横目で見る森尾は小さく息をつく。
「……心配っすね…」
「………正直……」
口に出していいものでもないと思いつつ、夜戸は心情を吐露した。
「無事に見つかってほしいとは思うんだけど、あまり心配はしてなくて…。なんとなく、これが薄情っていうのかな…」
人差し指が、目的もなく地図をなぞる。
「本当に薄情なら、捜しもしないと思うけど…」
森尾は、どこにも行き着く先のなさそうな指の動きを追った。
「気にする事ないんじゃない? 僕も、自分の親が突然いなくなっても、大袈裟に心配なんてしないかもね。「親なんだから」って、理由になんの? って話。育てられ方も愛情の注がれ方も、人それぞれなわけだし。親がどんな人間か他人は知らないくせに、親の身に降りかかったトラブルに対して冷めた態度だったら、他人は好き勝手に「冷たい」だの「もっと心配してやれ」だのうるさいよねぇ」
頬杖をついた足立の言葉で、袋小路に迷っている指が止まる。
「…そう言えば、親の話とかするの、身内以外であんまりねぇな」
「この年になったらそれが当然じゃないの? 言いふらしたくなるような面白い話があるってわけでもないし」
足立の話には、過去が見え隠れしている。
そのせいか、食卓を囲んだ家族の景色が想像できなかった。
「お前んとこ、そんなに冷めきってたのか?」
「冷めてたっていうか…、学生の頃とか、成績が良かったら何も言わないカンジかな…」
(「何も言わない」…。褒めもしなかったのか?)
森尾は自分の両親と正反対なことを感じた。
弟がいる分、比較されることは少なからずあったが、それでも平等に愛そうとはしてくれた。
叱られることも褒められることもあったけれど、偏りは見られなかった。
様子が違えば気に掛けてくれることだってあった。
誰にも迷惑をかけなければ好きな事をさせてくれた。
「森尾君の家族は、たぶん僕のところとは正反対じゃないかな…」
「…否定はしねぇよ」
思っていたことを言い当てられ、小さく返す。
「色々な親子関係があるんですね」
夜戸は天井を仰いだ。
不思議と、羨ましいとは思わなかった。
可愛げもなく、羨ましいと思ったところでどうにもならないと子どもの時から諦めていたし、自分の中の父親のイメージがすでに定着しているせいでもある。
「森尾君、誕生日とかにいいものもらってそう」
足立はからかい混じりに言う。
「……ドラムをもらった時は物凄くテンション上がった」
過去を覗かれているような気持ちになったが、森尾は恥ずかしそうに白状した。
「ドラムやるの?」
「まあ…。最近叩けてなかったけどな。去年までは耳コピして叩いたりしてたなぁ。ちょっと…、ショックなこともあって……」
切なげな表情を浮かべる。
足立は怪訝な顔をするが、夜戸は「ああ」と思い出した声を出した。
「好きなアイドルの突然の芸能活動休止?」
「なんで知ってるんすか!!?」
意外な人物の口から出たのでカウンターチェアから落ちそうになった。
「空君」
「あいつ!!」
脳裏に落合の無邪気な笑顔が浮かぶ。
「確か…、りせちー…」
「あ゛ー!! あ゛ー!! 夜戸さんに言われると倍恥ずかしい!!」
真っ赤な顔で両耳を塞ぎ、テーブルに額を押しつけて悶える。
穴があったら入る勢いだ。
「でも最近アイドル活動再開したって」
「マジすか!!?」
勢いよく顔を上げ、嬉しいニュースにパッと表情を明るくさせる。
そしてまた羞恥で悶えた。
「あはは…。あの子のファンね…」
足立は複雑な心境だ。
「い、言っとくが、俺は、陰ながら応援するファンだからなっ」
握手会に参加するほど、あくまで筋金入りではないと言い張りたいようだ。
「はいはい。再開してよかったね~」
小さな抵抗の開き直りだが、先程のリアクションは今更否定できない。
おかしかったので、唸る森尾に、「そういえば彼女のおばあちゃんの家がお豆腐屋さんって知ってた?」と聞くと、「何でてめぇがそんなの知ってんだよ!」と驚かれた。
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