00-6:Bad personality
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『明菜』
生まれた時から、日々樹兄さんに可愛がられていた。
あたしが幼稚園の頃は中学生で、学校帰りに迎えに来てくれる時もあり、特に、雨の日は急いできてくれた。
そして、手を繋いで、2人で家路についた。
『夜戸君ー』
『早く行こうぜ』
兄が中学の頃は、朝は兄の友人が迎えに来たし、休日は遊びに来て一緒に勉強会をしていた。
同じ人ばかりかと思えば、新しくできた友人を連れてくることもあった。
遊ぶ時間が減らされて、あたしは面白くなかったけど。
『兄さーん』
あたしは兄に駆け寄り、両腕をあげておんぶや抱っこを求めた。
父は昔からどこか怖くて近寄りがたかったし、母は身体が弱かったので父に止められていた。
対して兄は優しい顔で応えてくれた。
『明菜はヒマワリのように可愛いな』
兄はヒマワリが好きだった。
なぜか、小さい時に理由を聞いた。
『ヒマワリってさ、弁護士の花なんだ。父さんがつけてる弁護士バッジをよく見ると、ヒマワリがある。中央には天秤。僕もさ、いつかあのバッジをつけて、父さんと同じ仕事をするんだ』
兄は父に憧れを抱いていた。
父も、兄が弁護士になるように期待していた。
あの頃はまだ、父も笑っていたっけ。
母も、手伝えることがないかと提案してきた叔父を家に招き、叔父は兄が偏差値の高い高校や大学に行けるように、家庭教師となって兄の勉強を見ていた。
『どうしてヒマワリなの?』
兄の膝に座り、不思議に思って聞いたあたしの言葉に、兄は笑顔で答えた。
『ヒマワリの意味は、自由と正義』
「だからさ。だから好き」と続けた。
兄が死んだのは、あたしが9歳の誕生日を迎える前だった。
いつ、どうやって入ったのか、深夜に、通学している高校に忍び込み、屋上から飛び降りて自殺したらしい。
雨の日の朝、事務員に発見されたとか。
遺書はなかったが、屋上には靴が並べられていたそうだ。
どうして。
あたしは遺影に問いかけた。
どうして、何も言ってくれなかったの。
あたしのような子どもに言っても仕方ないと思ったのだろうか。
それでも、愚痴くらいこぼしてくれればよかった。
この世界に、不満があったのなら。
絶望したのなら。
何か、一言…。
遺影の兄さんは、微笑みを浮かべたまま、やはり何も答えてくれなかった。
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