10:Trick or Treat
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「お待たせさーん」
「こんばんはーっ」
手前の扉から、ツクモと落合空が入ってきた。
ツクモはすでに姉川の手にかかり、悪魔のツノを頭に、コウモリの羽を背中につけられている。
「空!? お前、どうし…」
「いやいや、兄さんたちがどうしたの!?」
森尾が言い切る前に落合がツッコんだ。
見慣れない兄の姿に戸惑ってしまう。
「トリックオアトリートー」
テンションは低いが、夜戸はお決まりを口にする。
「あ、そっか。ハロウィン…、って、明菜姉さんかわいい! 魔女ですか!? かわいい!」
「キュートさ~」
落合とツクモにはしゃがれてしまい、少し照れ臭くなって、夜戸は帽子をずらして顔を隠した。
「ん? そっちのオバケは透兄さん?」
「やあ」
足立はシーツを被ったまま手を挙げた。
こちらが脱力してしまう手抜きな衣装に落合は小さく噴き出す。
「パーティーするって言うから、連れて来ちゃったさ」
姉川から聞いていたツクモは、落合とコンタクトをとって待ち合わせ場所からトコヨへ連れて来たらしい。
「のけものみたいじゃない」
「別に、のけものにするつもりは…」
頬を膨らませる落合に、森尾は困惑の表情を浮かべながら指先で頬を掻く。
「誰!? この美少女!!」
森尾を押しのけ、何事かと思わず仰け反った落合を、穴が空くほど凝視する姉川。
「あ、初めまして…。落合空といいます…。前の姓は森尾で…、兄がお世話に…」
「似てへん!!」
後ろで尻餅をついた森尾と見比べるまでもなかった。
「自覚はあるが腹立つ!」
人間性まで否定された気がした。
「せっかく来たんだから、あなたの分も用意するからねー。おねーさんについてきてー。悪いようにはしないからねー」
「え? あ? え?」
笑顔で手首を引っ張られ、何をされるのか把握できないまま脱衣所へと連れていかれる。
「あ、華ちゃん…」
「おい、そいつは…」
立ち上がった森尾と、夜戸が止めに入ろうとしたが、2人の背後にシーツオバケが忍び寄り、まとめてシーツの中に引きこんで黙らせる。
数分後。
「キャ―――ッッ!?」
脱衣所から姉川の悲鳴が聞こえ、真っ赤な顔で飛び出してきた。
「ケダモノー」
先程の仕返しなのか、シーツオバケが夜戸と森尾を取り込んだまま煽った。
「知ってたなら男だって教えなさいよ!!」
バチーン!!
「ブッ!?」
シーツの中で身代わりにビンタされた森尾は、シーツの中から転げ出た。
近くにいたツクモは「うわ痛そうさ」とたじろいだ。
「あの、ごめんなさい…」
恥ずかしげにドアから半分体をのぞかせる落合。
握りしめた服で胸元を隠していた。
姉川は再びじっと見つめる。
腕組みをして考える仕草をとってから、腰に手を当てて力強く頷いた。
「びっくりしたけど、男なら男でいいや。似合うし。カワイイ」
「じゃあ叩くなっ!!」
痛そうに腫れた頬を両手で押さえる森尾の憤りももっともだ。
「思えば、ハロウィンってやったことありません」
「はは…。僕もだ」
シーツの中、思い出すように小さく言った夜戸の言葉に、足立は苦笑して頷いた。
まさか、どこかで小馬鹿にしていたイベントに巻き込まれることになるとは、人生何があるかわかったものではない。
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