08:I feel like I'm being smothered
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「イハサク!」
先手必勝とばかりに森尾はイハサクを召喚する。
「邪魔なシャドウから倒す!」
「森尾君ストップ!」
探知型なら迂闊なことはできない。
足立は止めようとしたが、イハサクは動き出していた。
シャドウ達に向かって戦槌を振り上げる。
「青」
姉川が一声かければ、青のシャドウ以外が一斉に避ける。
「!?」
戦槌が2体の青のシャドウに当てられたが、氷漬けにはならなかった。
むしろ、戦槌から放たれた魔力を吸収される。
「効かない…!?」
「赤」
続いて姉川が次の指示を出す。
「モリモリ後ろ!」
ツクモは叫んだが、驚く森尾をよそに、イハサクの背後に回り込んだ赤のシャドウ2体が同時に火炎を放った。
ボッ!!
「うわあああ!!」
攻撃をまともに受けたイハサクがダメージを負い、イハサクから伝わる痛みが森尾の身体を襲う。
「やっぱり火が弱点」
姉川はほくそ笑んだ。
「森尾君…!」
夜戸は、ペルソナと共に苦しんで片膝をつく森尾の姿を凝視する。
「まったくもう、考えなしに突っ込みすぎ」
足立とツクモは庇うように森尾の前に立った。
「アダッチー!」
「わかってるって!」
「「ペルソナ!」」
ミカハヤヒとマガツイザナギが召喚され、加勢に入る。
「赤と青はミカハヤヒ、黄色と緑はマガツイザナギ」
赤と黄のシャドウ4体、青と緑のシャドウ4体に分かれ、指示された対象に向かう。
赤のシャドウが同時に炎を放った。
ミカハヤヒは2つの円盤を回転させて盾に使い、自身を守る。
「こいつらけっこう早いさ!」
もう1つの円盤が赤のシャドウ1体にぶつかり、地面に叩きつけて潰し、消滅させた。
「あ、1体倒し…」
「黄」
瞬間、ミカハヤヒに黄のシャドウ2体が放った電撃が食らわされる。
「きゃああああ!!」
全身を走る衝撃にツクモが悲鳴を上げた。
イハサクとミカハヤヒが消えかかっている。
青と緑のシャドウ達を掻い潜り、宙に躍り出たマガツイザナギが、黄のシャドウ2体をまとめて切り裂く。
その背後を狙って、青と緑のシャドウ4体が氷結魔法と疾風魔法を放とうとした。
「!」
姉川の表情が驚きに変わる。
夜戸が離れたからだ。
「イツ!」
ナイフを掲げ、召喚されたイツが、青のシャドウ1体を背後から曲刀で水晶ごと貫いて消滅させた。
唐突な攻撃にシャドウの陣形が乱れかけ、隙をついて振り返ったマガツイザナギが雷撃を放った。
逃げ遅れた緑のシャドウが1体消滅する。
これで赤、青、緑が1体ずつとなり、残り3体となった。
「夜戸さん…」
姉川は一度攻撃を止め、切なげな瞳で夜戸を見つめた。
夜戸は振り返り、顔を見合わせる。
「華ちゃん、攻撃をやめて。戦う為に来たんじゃないの」
「…夜戸さんは、現実の味方なんですか? わかってくれると思ってたのに…」
「なんとなく…、あなたが迷ってるように見えた…」
ぴくりと姉川が微かに震えた。
心外だと言いたげに目を細める。
「……ウチが、何に迷ってるって…?」
「あなたがやりたかったことって、この事なの?」
責める口調ではない、純粋な質問だった。
だが、姉川はあしらうように鼻で笑った。
「……あなたがそれを言いますか」
「…え?」
「夜戸影久。あんな父親の言いなりになるのが、夜戸さんがやりたかったことなんですか? 昔、身近な人を救えなかったクセに、今も正義ヅラして弁護士なんかやってる、あの男に…!!」
「!!」
夜戸の心が、激しく揺れた。
「どこで…、それを……?」
姉川は質問には答えない。
「………迷ってるのは夜戸さんの方でしょう? ウチは拒否も承諾もされてませんから。よく考えてください。現実にいる意味なんてない…」
クラミツハを還し、後ろに下がって夜戸と距離を置いてから、オーバーオールのポケットから、折り畳まれた紙を取り出して開き、見せつけた。
「ウチは、夜戸影久の汚点を記事にして、現実にバラまくつもりです」
「!?」
“弁護士・夜戸影久の過去!! 17年前の悲劇!!”
大きな見出しには、そう書かれてある。
「…っ!」
夜戸は走り出して記事を奪おうと手を伸ばした。
だが、割って入ってきた残りのシャドウ達に阻まれ、足を止めてしまう。
「華ちゃん!」
「夜戸さん、ウチが解放してあげますからね」
姉川の金色の瞳が妖しげに揺らめき、優しく笑みを浮かべた。
赤と緑のシャドウが一斉に魔法を放つ。
「夜戸さん!」
後ろから足立に肩をつかまれてぐいと引き寄せられ、背中を押されながら反対側に走らされる。
立ち上がった森尾も、咄嗟の判断でツクモを拾い上げて駆け足で離れた。
ボウッ!
こちらには向けられなかった火炎と疾風がぶつかり合い、爆風を起こした。
煽られ、転ばないようにそれぞれがその場で踏み止まる。
そして、爆風が収まった時には、姉川の姿は消えていた。
シャドウ達もだ。
「ごほ、ごほ、逃げられたか…」
舞い上がる粉塵に咳き込み、足立は姉川が立っていた場所を見つめた。
「シャドウもうまく飼い慣らしてるさ…」
「分析までされちまって…。なんて能力だ…!」
静寂が戻る。
姉川がどこへ行ったのか、ツクモにはわからない。
「…夜戸さん、あの記事って…」
足立が夜戸に目をやった時だ。
「!」
崩れるように夜戸が倒れ込んできて、咄嗟に抱きとめた。
「夜戸さん!?」
「明菜ちゃん!?」
「夜戸さん!」
足立達の声が遠い。
顔色は真っ青で、追い込まれるように心臓が脈を打ち、途中で何度も遮られてるのではないかと思うほど呼吸もしづらかった。
夜戸の頭をよぎるのは、過去の光景だ。
そして、夜戸達は気付かない。
そこから数十メートル離れた民家の屋根に立ち、こちらを眺めている5つの人影の存在に。
.To be continued