08:I feel like I'm being smothered
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リボルバーのハンマーが起こされた。
その音に気付き、姉川の視線が足立に移る。
「あー…、一応聞きくけど、邪魔するの?」
「とりあえず、一旦夜戸さんから離れようか」
足立は落ち着いた口調で銃口を横に振って指示する。
「嫉妬ですか?」
夜戸の腕に絡みつき、にっこりと笑う姉川。
「何を言ってるのかな君は?」
同じくにっこりと笑い返す足立。
まったく笑える場面ではないのでハラハラする森尾。
「ああ、そうそう。読ませてもらったよ、君の記事。なかなか楽しめた」
「それはどーも」
「撮られた人物が死にたくなるほど心を抉る記事だったのに、何で晒さないの? もったいないなぁ。君だって面白いってわかってるんでしょ?」
「……………」
「答えは、本当に相手が死ぬかもしれないから。晒されて、世間から非難を浴びた人間は、耐え切れずに自ら命を…、なんて、調子に乗ったマスコミがやらかしてることだよね。死んでも自分達が悪いと思わず謝罪もない。…比べて君は、記事を作っておきながらも、人間の心の脆さを知ってるから怖くてできない。それが君の欲望のストッパーだ」
見透かしたような目だ。
森尾は「煽ってどうするんだ…」と気が気でなかった。
「あはは…。よく喋る人…」
姉川は乾いた笑い声を出す。
「…その理性が切れないうちに、戻ってきなよ」
「そ…、そうだ。まだセーブがきいてるうちなら…。戻れるはずだ。俺みたいに…」
森尾はバールを引き、手を差し出して説得を試みた。
「戻るってどこに? 現実に? 現実が…、ウチの何を受け入れてくれるの…?」
現実に、冷笑を向ける。
周辺がざわついた。
「!」
夜戸は頭上を見上げる。
8体のシャドウが、取り囲むように宙に浮かんでいた。
胴体のない、手とマントと仮面が水晶玉を抱いている。赤、青、黄、緑のマントの色違いが2体ずつ。
「シャドウ…」
足立達も空を見上げた。
シャドウ達はまだ何もしてこない。
姉川はクスクスと笑った。
「ウチは戦闘向きじゃないから、あの子たちに手伝ってもらうの」
左腕の赤い傷痕を自らの両目を覆うように当てる。
すると、中央に仕切りのないピンクミラーのタクティカルゴーグルが出現し、姉川の両目に装着された。
「クラミツハ」
背後に召喚される、姉川のペルソナ―――クラミツハ。
長い後頭部と口元は、真珠が散りばめられたローズピンクの布で覆われ、耳の部分は魚のヒレ、両目の部分はカメラのレンズとなっている。
細身で青い肌にはアラブの踊り子を思わせるワインレッドカラーの衣装を纏い、胡坐をかいていた。
露出している腕や脚は、サファイアのような青い魚鱗で覆われている。
クラミツハの手が動きを見せた。
両手を胸の前に置いて間隔を開けると、水の球体が作り上げられる。
そこから、水で形成された金魚サイズの水の魚が何匹も球体から飛び出し、宙を泳いだ。
「なんだアレ…」
体は水だが、目の部分はクラミツハと同じくカメラのレンズだ。
水魚の目は足立と森尾とツクモをとらえる。
「イハサクは氷属性…、ミカハヤヒの防御力も高いなぁ…。マガツイザナギは…特に厄介そうね」
「「「!?」」」
姉川の前でペルソナを召喚していないのに、見破られていた。
ツクモははっとする。
「あの子…、まさか…!探知型!?」
水魚の視界を通し、映った相手の情報は姉川のゴーグルに送られ、弱点も属性もバレてしまう。
「特捜隊にもいたねぇ」
能力の厄介さは足立も経験済みだ。
頭が痛くなるほど。
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