00-4:Call me
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7月2日月曜日、6月もあっという間なもので、梅雨も明けた。
目覚ましの音に起こされ、ベッドから起き上がって支度にとりかかる。
寝間着から涼しげな半袖のスクールシャツに着替えて青のネクタイを締め、グレーのスカートを穿き、白の靴下を履いて2階の自室から1階へと下りた。
リビングへ行く前に途中にある洗面所で、顔を洗って髪をとかし、歯を磨くのは忘れない。
キッチンカウンターで朝食を作っている音が聞こえ、香りが鼻をくすぐった。
「おはよう、明菜」
リビングに入ると、黒のエプロンを前にかけてオムレツを作っている母がいた。
あたしと同じ髪色で、さっぱりとしたショートカット。
化粧はしてないけど肌は綺麗で皺もなく、来客と会っている最中、あたしと肩を並べれば姉妹みたいだとよく言われる。
「…おはよう…。どうしたの? 朝食はあたしが作るから…」
いつもはあたしが作るのに。朝くらい、ゆっくりしていてほしかった。
「たまには作らないと…。作り方、忘れそうで…」
母は手元を休めず、口元を緩ませ、穏やかな声とゆっくりとした口調で言った。
それから「ああ…」と何か思い出したように漏らす。
「コーヒー淹れてくれるかしら? 私……」
あたしと目を合わせ、笑みが消えた。
ほんの、一瞬。
「……私…、明菜みたいに美味しく淹れられないから…」
再び浮かべる笑み。
母の笑い方は、いつもどこか寂しげだ。
「うん…」
朝食が出来上がり、母と2人で人数分を食卓に並べる。
「明菜、学校…楽しい?」
「…え?」
動作を停止してしまう。
小学・中学にいた時はそんなこと聞かれたことなかったのに。
「そう思っただけ…。友達でも、できたのかと…」
エプロンを外しながら母が言った。
目を逸らしたまま探るような言い方に引っ掛かりを感じる。
「父さん、気にしてた?」
図星だったようだ。
微かに母の体が震えた。
罪悪感に包まれたような顔をしている。
「影久さんは、心配してるだけよ」
父は、あたしが周りと交友関係をもつことに反対している。
端的に言えば、邪魔だからだ。
あたしの将来の妨げになるから。
顔を合わせても、話題は大体成績や将来に関することだけ。
家族らしい会話ができるのは、今のところ母だけだ。
だから、たまにこうやって何気ない会話の中であたしが間違いを犯していないか、母にチェックを入れさせている。
自分に対して本音で話しているのか、あの人は疑問に思っているのだろう。
「心配しなくても、友人なんて作る気はないから」
「……そう…」
母は目を伏せる。
最初に聞いた、学校が楽しいかどうかは、母自身からの質問だったかもしれない。
足立先輩が頭に浮かぶ。
友達…。
なんとなく、違う気がする。
きっとそれは先輩も思っているはずだ。
それでも、これはあたしだけかもしれない。
彼との昼休みを過ごすのは、いつも待ち遠しく感じた。
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