00-3:Rain is falling
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6月11日月曜日、5限目の3階の階段近くの美術室へ向かう途中、廊下の奥にある音楽室から出て来た3年生とすれ違った。
前方から足立先輩もひとり、教科書を抱えて音楽室から出てくるのが見えた。
図書室以外で会うことはないので新鮮味を感じた。
こちらが美術室に入る前に気付いてくれるだろうか。
声をかけてもいいかな。
「足立先ぱ…」
「先輩!」
あたしの横を、同じクラスの女子生徒が走り抜け、真っ直ぐに先輩の下へと駆け寄った。
先輩はその子に気付いて足を止める。
あたしはなんとなく足早に美術室へと逃げ込み、出入口のドアから様子を窺った。
怪しい行動なのは百も承知だが構わない。
「!!」
先輩に、桜色の封筒に入れた手紙を渡している。
女子生徒の顔は、恥ずかしげに頬を赤く染め、先輩に小声で何か言ってからこちらに走ってきた。
あたしは反射的にドアの後ろに隠れる。
「どうだった?」
「渡せたっ」
女子生徒が渡すことはその友人たちに知られていたのだろう。
教室の後ろで待っていた友人たちと合流してはしゃいでいる。
一人分の足音が廊下に響き、美術室の前を通過していく。
足立先輩だ。
わかっているのに、廊下へ出ることができなかった。
今すぐ飛び出して、話しかけて聞けばいいのに。
「どういう手紙ですか?」って。
ダメだ、踏み込み過ぎてる。
なんとなく、それは聞いちゃダメ。
足音は階段を下りていった。
「すごくドキドキする…」
「がんばって! 応援してるからね」
「ありがと。付き合えちゃったら、お昼一緒に食べられなくなるかも…」
「何を気にしてんのさ」
手紙を渡した子を見る。
背は高いけどモデルみたいにスタイルがよくて、ウェーブのかかった長髪が似合って、笑うと並びのいい白い歯が見えて、肌も白くて、スカートも短くて…。
可愛い、というより、美人だ。
「……やだな…」
あの子の隣に行かれたら、昼休みに図書室に来てくれなくなるじゃない。
窓の向こうに、重そうな灰色の曇り空が見える。
雨水がたまって膨れているように見えた。
今日は晴れるって言ってたくせに。
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