05:Shape of heart
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腕を組んで見下すように立っているのは、化粧は濃く、ショートの白髪を後ろへ逆立たせるように流している、見た目は40代前半の女だ。
黒の生地に星屑のように宝石が散りばめられ、スリットで右脚が露出しているワンピースを着ている。
耳や首、10本の指、手首には、見るからに高級そうなアクセサリーを身に着けていた。
女のすぐ背後に浮かんでいるのは、全長約3m、透明色の巨大な体は、クラゲを思わせる大きな笠と何本もの触手を持ち、そんな胴体の上には、毒々しい紫の肌を持つ細身の裸体の女の上半身が突き出るように存在している。
胸が隠れるほどの長い髪を持ち、顔にはハートを逆さにしたような仮面をつけていた。
見上げた夜戸が注目したのは、胴体だ。
クラゲの笠の膨らみの中に、今まで盗んだだろう宝石がぎっしりと詰め込まれていた。
先程回収された宝石も、触手の中の管を通って宝物庫となっている胴体へと吸い上げられていく。
「それ…全部…」
「最近、コソコソ何かが嗅ぎまわってると思えば…、小娘、お前だったのかい」
女は鼻で笑い、自身のペルソナの触手を撫でた。
「全部、私が手に入れた、“愛”だよ」
「愛…?」
「誰にもやらないよ…。もちろん、アンタにもね…!」
女が一歩踏み出す。
スリットから見えた右脚のスネには、縦一線の赤い傷痕があった。
「トヤマツミ!」
名を呼ばれ、檻を開け放たれた猛獣のようにペルソナが動き出す。
触手を鞭のようにしならせ、夜戸に振り下ろされた。
「っ!」
夜戸はガラスケースに手をついて乗り越えて避ける。
上から降り注ぐ触手の攻撃が続いた。
「ペルソナ!」
走りながらかわし、傷痕からナイフを取り出してイツを召喚した。
イツの曲刀が触手を弾く。
見た目に反して触手は硬かった。
あちらの方が攻撃範囲は広く、弾いても弾いても次の触手の猛攻が続き、近づくことを許さない。
「う…っ、く…っ」
ペルソナも長時間の使用はできない。
徐々に気力が削られていく。
「背後がガラ空きだよ!」
はっと振り返ると、3体のシャドウが迫ってきた。
歯を食いしばってナイフを握りしめ、迎え撃つ体勢をとる。
至近距離まで詰められた時、突然、シャドウ3体がバラバラに切り刻まれた。
「!?」
ふわりと背を向けて降り立ったのは、マガツイザナギだ。
緊張の糸が解けそうになり、危うくイツを消すところだった。
「ごめーん、遅れちゃった~」
間の抜けた声とともに展示会の出入口から現れたのは、足立とツクモだ。
「エスカレーター、止まっててさぁ、頑張ってのぼってきたよ」
疲れた、と言いたげに前屈みになった。
「だらしないさ、アダッチー」
ツクモに疲労は見られない。
「四足歩行と二足歩行じゃ、かかる負担が全然違うの」
現場からそのままトコヨにやってきた夜戸と違い、足立は拘置所から捜査本部を通らなければならないため、到着が遅れたのである。
触手の攻撃が止まり、夜戸は足立の下へ駆け寄った。
「足立さ…」
「もー」
「ッ!」
姿勢を戻した足立は、ペチッ、と夜戸の額を手のひらで軽く打った。
それほど痛くはなかったが、夜戸は目を丸くして打たれた額を右手で押さえる。
「昨日言ったじゃない。先に到着するのはいいけど、軽はずみな行動はやめてよねって。 危なかったよ、今」
鼻先を指さし、幼い子どもを叱りつけるような言い方だ。
「ご…、ごめんなさい…」
確かに、展示会の出入口付近で隠れて合流を待っていればよかった、と思い、素直に謝った。
「僕のことも、「遅れて来たくせに」って言い返してもいいんだよ?」
足立の顔を見上げると、腕を組み、困ったように笑っている。
「仲間がいたのかい…!」
舌打ちした女は、目つきを鋭くさせた。
「へ? 犯人って女だったの? しかもオバさ…」
「アダッチー! 上! 上!」
言いかけてる途中でツクモに叫ばれ、足立は振り下ろされた触手に気付いた。
「うわっ」
飛びのこうとする前に、イツが先に動き、曲刀を振るって触手を弾き返す。
夜戸と足立は、互いに目を合わせたのを合図に同時に駆け出し、イツとマガツイザナギを引き連れ、真っ直ぐに女に突進する。
「トヤマツミ!」
トヤマツミの触手が何本も伸ばされ、連続で打ってきた。
イツとマガツイザナギは武器を振るいながら必死に応戦する。
掻い潜ってきた触手が2人に向かうが、足立はリボルバーで撃ち、夜戸はナイフで弾いた。
女はすぐ目の前だ。
「こっちに来るんじゃないよ!!」
夜戸のナイフ、鹿田のダーツと同じく、女が背中に隠していた武器を取り出す。
「「!!」」
それを突き付けられた足立と夜戸は思わず足を止めた。
細身の四十路の女には不釣り合いな、バズーカ砲だ。
砲口が赤く光る。
ドオン!!
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