04:What is the common sense?
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暑さで布団を被らずに眠っていると、足立は胸の重みで目が覚めた。
「こんばんはー、アダッチー」
足立の胸に遠慮なく圧し掛かっているのは、ツクモだ。
「こんばんはー、おやすみなさ~い」
ツクモを押しのけ、足立は布団を被った。
「またそうやって潜るさ! アダッチーはカタツムリさん? それともカメさん? 暑かったクセに!」
ツクモが布団の端を引っ張られる。
脱力していたので今度は簡単に引き剥がされた。
これだけ騒いでも刑務官が来ないということは、また勝手にツクモに連れてこられたようだ。
足立は枕に額をつけてうつ伏せになり、起床の拒否を体で表現してみせる。
「世間は睡眠時間なんだよ。もう事件は解決したでしょ。そもそも事件って現役のケーサツ官が担当して解決に導くものなの。僕はもうケーサツ官じゃないから急な呼び出しは勘弁してよ」
「現実のケーサツじゃ、どーにもならないから、またお願いしに来たのさ」
「何? また放火魔みたいなのが出たの?」
「今度は宝石泥棒さ」
一応気になってどんな極悪事件かと思っていたが、拍子抜けしてしまう。
「問題ないでしょ。放火より安全なんじゃない? ひとまず死人が出る心配ないし」
「悪用されてるのが大問題なのさ! 人間の欲なんて留まるところがない。淀んだ欲が満ちれば満ちるほど、使役されるシャドウも増えて大変さ」
「あのねぇ、僕はヒーローじゃなければ今なら無料の便利屋でもないの。そう何度も手伝わないよ」
手をひらひらさせるが、ツクモは諦めない。
「近頃頻繁になってきて、ツクモじゃ手に負えないさ。せめて、ペルソナの力を手にした人間が増え続けてる原因を突き止めてほしいさ」
足立は寝返りを打ち、ツクモと目を合わせた。
「原因?」
気になってはいた。
一体、どういうきっかけで、鹿田がペルソナの力を手にしたのか。
ここは八十稲羽市ではないが、度々起こるようでは確かに無視はできない。
『…この世界に、招かれざる人間が次々とやってきて、悪事を働きだしたさ。何かを合図にしたように…』
初めてツクモと会った時の言葉を思い出す。
まるで、最近起こったような言い方だった。
もしかして、と懸念がよぎる。
「原因突き止めて解決させないと、僕は毎回呼び出しくらうわけ?」
「もちろん」
即答だった。
口癖の「さ」もつけなかった。
「ううわあぁぁ~、めんっどくさ~~~っっ」
両手で顔を覆って天井を仰いだ。
心の底からの声だった。
安らぎが欲しかった。
「始めからそう言ってくれればよかったのに。あの放火魔気絶させずに縛り上げて拷問するなりで吐かせたらすぐだったじゃない」
そうすれば余計な手間が省けたはずだ。
ツクモはゆっくりと足立に近づき、背中を軽く叩いた。
「頼りにしてるさ、足立刑事ぃい゛だだだだだッッ!!;」
両手で頭を鷲掴みにされたツクモは、今まさに無惨に引き裂かれようとしている。
「ツギハギを増やしてあげるよ? 嬉しいでしょ? オシャレだよ?」
足立の口元には邪悪な笑みが浮かんでいたが、眼差しは氷のように冷たかった。
「調子に乗ってごめんなさい~~~~!!;」
ツクモは暴れながら謝った。
「アンタ、彼女いてもすぐ別れたさ? 女の扱いがなってないさ」
「ん?」
「やめて。その手やめて怖いさ;」
再びつかもうとする体勢だったのでツクモは背中を見せなかった。
「とにかく、今回の宝石泥棒とやらをつかまえて、ゲロさせればいいんでしょ?」
ようやく重い腰を上げ、「う~ん」と真上に腕を伸ばして背骨を鳴らす足立に、ツクモは頷く。
「そうと決まれば早速行くさ~」
足立は靴を履き、鉄の扉のドアノブに手をかけた。
「ああ、そうそう。作戦を立てるために、『捜査本部』を作ってみたさ」
「ははっ、『捜査本部』? ケーサツの真似事?」
笑って言いながら、扉を開ける。
「!」
前回は、問題の現場に直通していたが、今回扉を開けた先は、室内だ。
入って左側はバーカウンター、6席のカウンターチェアが並び、右側には2人掛けローソファーと木製のローテーブルが各2つあった。
床はフローリング、一般家庭の一軒家のような余裕のある広さで、奥には別の扉がある。空調は程よく、昼間の外にいるような明るさだ。
「どこが捜査本部? バーじゃない」
「正確にはカフェバーさ。オシャレさ」
「君さ、オシャレって言えば何でもいいわけじゃないんだよ?」
肩を落とす足立は、カウンター席の手前から3番目に腰掛けた。
「お酒とか出るの?」
「飲ませるわけないさ。なんの為の捜査本部さっ」
目の前の棚にはカフェらしい食器はあっても、酒のビンは並んでなかった。
「だったらバーカウンターとか作るなよ」
口を尖らせながら言うと、
「足立さんですか?」
「!」
先客が向こうのカウンターの下からひょっこりと顔を出し、足立は目を丸くした。
ぴょん、とカウンターテーブルに飛びのるツクモは、「やあ、お待たせ」と夜戸に声をかける。
「夜戸さん?」
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