03:I won't let that happen
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自身の独居房に戻った足立は、とても腑に落ちない顔をしていた。
ツクモに渡されたのは、どう見ても押収されたはずの自身のケータイだからだ。
胡坐をかいて座り、ケータイから顔を上げてツクモを軽く睨みつけた。
「どういう…」
「コピーさっ。そんな怖い顔しないでほしいさっ」
遮るように言い返された。
「ふーん」
確かに『ウツシヨ』以外の番号はない。
電話帳以外、カメラ機能も設定もまったく反応しなかった。
ふと、テレビの中で使われたメガネの存在を思い出した。
似たようなものか、と。
「使い慣れたものがいいと思って用意したさ。まあ、ツクモがいれば、わざわざ電話かけなくても戻れるさ」
「…………で、結局君って何者なの? シャドウとかじゃないんでしょ?」
「もちろんさ。ツクモは…、ツクモs」
わざと肘でツクモに倒れ込み、そのまま枕にしてやる。
「うぎゃー!! 何するさー!!」
「ただ働きで疲れたんだよ。しかもちゃんと眠れなかったし。仮眠くらい手伝ってくれていいじゃない」
眠れなくてイライラしていた。ツクモは足立の頭の下でバタバタと慌てている。
「やめるさ~!」
「あ、モフモフ…。抱き心地最高…」
まるで低反発の枕だ。
「も~~~~!!」
勢いをつけて転がり、脱出する。
壁に当たろうが構わなかった。
「手伝ってくれたことには感謝してるけど、アンタやっぱり本当に最っ低さ! レディの身体を蹴ったりつかんだり抱きついたり…。好き放題弄ぶなんてヒドすぎるさ!」
足立の頭の中は真っ白で、ツクモは涙目だ。
頭の回転は早い方だが、理解に時間がかかった。
「え……。君…、メス?」
「呼び方!! 『女』って言葉使うさ!!」
キレられた。
首の小さなネクタイのことを指摘して、不機嫌になった理由が判明する。
ツクモにとっては『女』としてのオシャレだったのだ。
「もう、ツクモはまだまだやらなきゃいけないことたくさんあるさ! 困った時はまた頼むさ! おやすみ、アダッチー!」
吐き捨てるように言って、食器口から無理やり通って出ていった。
残された足立は、『ウツシヨ』に電話をかけてみる。
プルルルル、とコール音が聞こえたが、ノイズ音に切り替わり、部屋も一瞬だけ歪んだ。
窓からスズメの声が聞こえる。
元の世界に戻ったようだ。
『知ってます』
ふと、微笑とともに言った夜戸を思い出す。
次に頭に浮かんだのは、痛々しい十字傷だ。
「……そういえば」
あの胸の傷は、一体いつからあるのか。
「点検!」
刑務官の声が遠くから聞こえた。
「…結局、ぜ~んぜんおやすみできなかった…」
力が抜けたように呟く足立は、大きな欠伸をしてから、「また頼むさ」と言ったツクモの言葉を思い出し、「もう2度と頼むな」と空中に独り言を放って大の字に倒れた。
.To be continued