03:I won't let that happen
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戦いが終わり、夜戸の傍らのイツが煙のように消える。
「大丈夫?」と駆け寄ってくるのはツクモだ。
夜戸はゆっくりと立ち上がり、こちらにやってくる足立と向かい合った。
「君も、ペルソナが使えるようになっちゃったか~」
「ペルソナ…」
手に持っていたナイフも消え、胸元の傷痕に手を触れた。
「その傷から出て来たようにも見えた…。あの男にも。どこから武器を出してんのかと思ったら…」
足立は肩越しに、気絶している鹿田に振り返る。
ダーツは、額の傷痕から取り出したものだ。
「やっぱり何か違うね。僕は傷がなくても呼び出せるし」
「そういえば足立さんも…」
夜戸は足立のマガツイザナギを思い出した。
「僕は、去年、手に入れたんだ」
テレビの中に入ったり他人を入れる力と、ペルソナ・マガツイザナギの力を。
「…足立さん…、教えてください。去年、八十稲羽市で何があったんですか?」
「知ってどうするのさ」
「知りたいって理由じゃダメですか? 今なら、どんな人達よりあなたの言葉を信じます」
「聞いて面白くも気持ちのいい話でもないよ」
「お願いします」
無表情の夜戸が頭を下げる。
「……………はぁ…」
頭を掻き、ため息をついた足立は「そこ座っていい?」と街路樹の下にあるベンチを指さした。
ベンチに腰掛けた夜戸と足立。
足立は足を投げ出すように座り、足下を見つめながらゆっくりとした口調で、必要な部分を選んで切り取って繋げるように去年の事件について話した。
夜戸は表情を変えず、顔を横に向けて足立の話に耳を傾けている。
被害者の女性をどうやって殺したかと聞いても、眉ひとつ動かさなかった。
「――――で、特捜隊に負けた僕は、警察に罪を告白…。今に至るってわけ…」
(まあ、留置場の時も色々あったけど、ここはハブいてもいっか)
足下から顔を上げ、夜戸に笑みを向ける。
「今の僕って、そういう人間なわけ。だから、裁判でも罪を軽くしてもらう必要はないし、死刑も受け入れるつもり」
「…死体遺棄は、足立さんの手で行ったものではありません」
「ん?」
「そもそも、足立さんが直接殺したわけじゃない。2件目はともかく、1件目に殺意はなかった…。怖がらせてやろうと思ってやったことだった…」
「ちょっと、夜戸さん?」
口調が真剣だ。
夜戸の頭の中は、事件の整理と足立の行動をまとめている。
嫌な予感がして、足立は待ったをかけた。
「まさかと思うけどさ、今の話を聞いても、僕を弁護しようなんて考えてる?」
「当然です」
夜戸の即答が、自棄にも冗談にもまったく聞こえなかった。
足立の笑みが引きつる。
「シャドウの存在とかどうやって説明するのさ。誰も信じないよ」
「あたしはさっきの話で信じました」
「君が信じてもしょうがないでしょ~」
「納得させてみせます」
「いやいや、さすがに恥かくって。法曹界の笑いものになっちゃうよ」
「かまいません」
「あのね…」
手のひらで目を覆う足立はイラついていた。
「足立さん」
夜戸はベンチから立ち上がり、足立の前に立つ。
「国選弁護士って知ってますよね…?」
「………………」
「私選弁護士がいない場合、国が勝手に弁護士を選んで被告人につけさせます。足立さんが行う裁判は間違いなく必要的弁護事件。弁護士の拒否はできません。あなたの事情を知ったかぶった弁護士が弁護をして、それらしいことをベラベラ言って見せかけの守りをするでしょう」
「……………」
「……そんなのはあたしが許さない」
足立は手を外して夜戸を見上げる。
相変わらず無表情だ。
だが、先程の夜戸の言葉は、込み上げる怒りを抑えていたように聞こえた。
「足立さんが望む通り、罪を軽くしようなんて考えません。真実を認めてもらったうえで、判決を下してもらいます。…選んでください。真実を知ろうともしない弁護士(赤の他人)か、真実を知った弁護士(あたし)か。あなたの作ったルールに必要なものは、どちらですか?」
再びうつむく足立の肩は小さく震えていた。
笑っているのだ。
「君ってさ…。くく…っ」
顔を上げて言った。
「弁護士、向いてないよ」
夜戸はわずかに肩を落とす。
「…………知ってます」
そう言って、薄く微笑んだ。
そして、右手を差し出した。
「よろしくお願いしてもいいですか?」
「君のそういうとこだよ。…よろしくされるのは僕の方だろ?」
立ち上がった足立は夜戸の手を握り返した。
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