36:Me too
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「こ、この光は…!!」
マガツノサカホコは眩い光に目を細め、夜戸と足立の前に現れたペルソナに驚愕する。
『イツノオバシリノカミ』―――腰まで伸びた白銀の髪、頭には鹿のような2本の立派な白色の角が生え、両目は菊紋の仮面に覆われ、白い肌に浮かぶ唇は優しい微笑を浮かべていた。
イツにあった黒い鎖は1本もなくなっている。
ボディは、宝石のエメラルドが散りばめられた白のロングコート、開かれた胸元には光の太いラインが十字架のように縦横に伸びている。
ロングコートの腰下は開かれ、白銀の両脚が露出し、膝は鎧のような膝当てがつけられ、ヒールのついた黒い足の爪先はナイフの刀身がついていた。
長袖から見えた手は両脚と同様に白銀で、右手には、矛のように長い柄で、ボディよりも長い真っ直ぐな刀身をもつを長刀を握りしめている。
「鬱陶しい光だ…!! 闇に食われてしまえ!!」
全てを滅ぼそうと、黒い稲光が放たれた。
「行くよ」
「はい!」
2人は息を合わせて刀を振り上げる。
すると、新たなペルソナは動きに合わせて長刀を振り上げ、漆黒の光を切り裂いた。
「何ぃ…!!?」
イツノオバシリノカミはマガツノサカホコに向かって大きく跳躍した。
マガツノサカホコは空いた左手のひらを見せる。
そこには、気を失ったままの二又の身体が埋められていた。
意識を乗っ取ったのか、カッと目を見開いた二又は不気味に笑う。
「ハハハ!! 敵対していたとはいえ、お前達に同族が殺せるか!!?」
夜戸達が躊躇っていたことを思い出し、動きを鈍らせようとしている。
「うっわ。せこいやつだな…」
「大丈夫です」
夜戸は凛とした声で言い放つ。
「あたし達の刃は、人を傷つけない!」
躊躇いもなく刀身を突き出し、マガツノサカホコの左腕を四つ割りに斬り裂いた。
刀身をすり抜けた二又の身体のみが無傷だ。
「グァアアアアアッッ!!」
イツノオバシリノカミはそのまま突っ切り、マガツノサカホコの胸の中心に刃を突き立てた。
「グゥッッ」
マガツノサカホコの巨体を衝撃で黒い柱に押し付ける。
しかし、長刀の刀身は半分までしか刺さらなかった。
ボディは鋼のように硬く、刺さった部分からヒビを刻むのがやっとのダメージだ。
それでも夜戸は諦めず、踏ん張って刀身を押し込もうとした。
「無駄だ!! 何をしようと無駄だ!! 我は不滅! お前如きに砕けるはずがない!!」
高笑いが響く中、足立は不敵な笑みを浮かべる。
「ちょっと、誰か忘れてない?」
リボルバーから銃弾が放たれた瞬間、マガツイザナギが宙へ飛び出し、イツノオバシリノカミと並んで稲妻型のヒビ割れに矛先を突き入れた。
すると、ヒビ割れはやがて大きな穴となり、2つのペルソナの刃がマガツノサカホコを一気に貫き、突き抜ける。
「ッッ!!?」
勢いは止まらない。
さらにその先にある黒い柱に深く突き立て、雷撃と疾風を纏い、刃の竜巻となって内部からも外部からも斬り刻み、木端微塵に破壊した。
「馬鹿…な…ッ!!?」
ボディを破壊され、黒い柱の支えを失い、マガツノサカホコの頭部が落下していく。
「…我が……消滅など…ありえ…な…」
「ええ…。人の負の欲望、絶望、そして痛みはなくならない。でも、あたし達は見てきた。傷に塗れてしまっても、誰かの想いに支えられ、応え、立ち向かっていく人達もいる。痛みがあるから、人間は強くなれるの。誰もが持ってて、消えてなくなるなんてことは、それこそありえない!」
「つまり、今度こそ本当にお役御免だよ。自分達の痛みは自分達で解決するってこと。神頼みじゃなくてさ」
夜戸と足立の言葉を聞きながら、地に落ちたマガツノサカホコの頭部がゆっくりと霧散していく。
「……つくづく…愚かな人間だ…」
憎しみを込めて罵り、間を置いて「フッ…」と一笑した。
「……いいだろう…。たとえ…滅ぶことになっても…気が済むまで…進み続けるがいい…。それがお前たちの答え……ならば……」
やがて闇の塵となって消滅し、最期の言葉が響き渡った。
「我は…、いつでも人間達の…傍らに……」
「……………」
夜戸と足立の手の中にある刀も、光の粒となって消え始めた。
イツノオバシリノカミもそれに合わせて消えていく。
「勝った…って言っていいのかな…」
上空へ上がる光の粒を見上げながら足立は呟いた。
つかみづらい達成感だ。
「足立さん」
足立は上空を見上げながら「何?」と尋ねる。
「好きです……」
「あはは。…君ってさ、こんな時でもほんと…」
苦笑して振り向こうとした時、糸が切れたかのように脱力した夜戸の身体が足立に寄り掛かった。
「…夜戸さん?」
咄嗟に支えて声をかけるが、返事は返ってこない。
「!!」
地震が起きた。
マガツノサカホコに打ち勝ち、黒い柱を壊したからだろう。
激しく揺れる地面は亀裂を生み、夜戸と足立の足下が崩れた。
「マジかよ…!」
足立は夜戸を抱きしめたまま、落石と共に海へと落下した。
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