36:Me too
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堤防に上がった姉川と落合は、足立と夜戸がいる方角を凝視していた。
大荒れの海と、暗雲を繋ぐのは、巨大な黒い竜巻だ。
「明菜! 月子ちゃん! 足立さん!」
禍々しい力の塊が、渦となって巻き上げられている。
「一体…、どうなってるの!?」
考えたくはないが、悪い方向に進行しているのは明らかだ。
竜巻は徐々に肥大していく。
いずれは上陸してすべてを呑み込んでしまうだろう。
ここまでくると天災だ。
砂浜もすでに海面に覆われ、荒れ狂う波が堤防に打ち付けていた。
姉川は堤防の縁から一歩下がり、その際に下を見てゾッとする。
黄色の目玉が無数に海面に散らばっていた。
「空君! シャドウが!!」
黒い海面か形を成さないシャドウがカエルの様に這いつくばりながら堤防へと上がってくる。
1体1体が四つん這いの状態でも1m以上はあった。
「イハツツメ!!」
落合は傍にいる姉川と羽浦を守る為、イハツツメを召喚して大鎌で切り裂く。
炎に包まれるシャドウのよそで別のシャドウが次々と襲ってきた。
「こっちもヤバいよ!!」
姉川に声を放った時、落合の目の前から5m級のシャドウが高波の如くそこまで迫ってくる。
「空君!!」
「っ!!」
逃げ場はない。
イハツツメが炎を放って火だるまにするが、消滅しきれずそのまま倒れ込んできた。
下敷きになりかけた時、
「イワツヅノオ!!」
「ヒハヤビ!!」
パァン!!
黄金の戦槌と6枚の円盤が火だるまの大型シャドウに叩きこまれ、火を纏ったまま大型シャドウは海へと沈んだ。
姉川と落合は同時に振り返る。
森尾とその肩にのったツクモが、こちらに駆けつけてきた。
「兄さん!! ツクモ姉さん!!」
「ハナっち! ソラちゃーん!」
「遅れて悪ぃ! 無事…うわ!?」
言いかけた際、堤防から飛び降りた姉川が森尾に抱き着いた。
森尾は反射的に両腕を背中に回して受け止める。
「遅い…!!」
泣き顔で責める姉川に、森尾は目のやり場に困りながら「わ…、悪い…」ともう一度謝った。
「なんだお前、彼女いたのか!」
マイクロバス型の護送車を車道の中央に停車させ、運転席から降りた鹿田が驚きとからかいを含めて言った。
「やかましい! まだ彼女じゃねぇ!!」
顔を真っ赤にして大声で否定した森尾だったが、「まだ…?」と言葉を拾った落合が思わずニヤついた。
「ギャー!! あの竜巻は何さーっ!?」
「足立と夜戸さんは!? まさか…、あの中じゃねーよな!?」
竜巻を目にしたツクモと森尾は仰天していた。
「シャドウもどんどん押し寄せてくるよ!」
「ここも危ない」と落合は羽浦を声を張り上げ、羽浦を背負い、護送車の中で待機している都口と道草に預けた。
「どうする!? 逃げるか!?」
逃げられる場所があるのかわからないが、運転席のドアを開けた鹿田は提案する。
「明菜達を置いていけない!!」
姉川はすぐに却下した。
落合も羽浦を預けてマイクロバスを降りる。
「うん。ボク達は残るから、羽浦さんをお願い!」
「そうは言っても、闇雲に車を走らせたところで、安全な場所に着くとは限らない。ガソリンの無駄だよ」
都口は肩を竦ませ、厳しい口調で言った。
道草は羽浦を後ろのシートに寝かせて傍に立ち、フロントガラスから姉川達の様子を不安げに窺っている。
「あの弁護士の人、無事なの?」
マイクロバスの上から小栗原が尋ね、姉川は答えた。
「反応が消えたわけじゃない。ちゃんと生きてる!」
夜戸と足立が追い込まれている状況にあるのは確かで、姉川が感知しているのは2人の反応は微弱なものだが、ないよりマシだ。
少しでも前向きの姿勢でいないとクラオカミに集中できない。
「本当に世界が壊されるさ!? みんなの世界が…。ツクモはそんなの絶対嫌さ!」
ツクモはヒハヤビで堤防に上がってくるシャドウ達を蹴散らす。
森尾も護送車に近づきそうになったシャドウをバールで撲り、「近づくな!」と威嚇した。
「まだだ」
そこへ、突然聞こえた声に全員が振り向く。
森尾は「てめぇは…!」と睨んだ。
現れたのは、昌輝だ。
太く長い枝を杖代わりにして歩いてきた。
「まだ、間に合う」
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