01:Let me defend you
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『先輩…、あたし、あの場所で待ってますから』
消えそうな声でそう言われたのを、足立は夢で思い出した。
ゆっくりと引き上げられるような感覚で目を覚ますと、現実はまだ真夜中だった。
足立のいる独居房の窓の向こうは暗闇だ。
拘置所にとっては消灯時間内で、廊下の光がドアから漏れている。
「…全然、変わってなかった…」
夢の夜戸と、面会室で再会した夜戸を交互に思い浮かべた。
あの頃から時が止まったのではないか、と思わせるほど、彼女の容姿は成長していなかったのだ。
制服を着せれば、容易に周りを高校生だと思わせることができるだろう。
舌を打ち、横向けに寝返りを打つ。
(今更…)
思い返すのは、高校時代の、図書室だ。
「はぁ…」
(弁護をしたいって? 助けたいのは……)
小さくため息をつき、もう一度仰向けになった。
その時、もふっとした柔らかいものを背中で潰した気がする。
「ぐえ~」
「うわ!?」
気のせいではなかった。
突然聞こえた潰されたカエルの声に驚いて布団から飛び起きる。
「な、なに…?」
「うう…。優しく起こしてやろうと思ったら、潰されたさ~~;」
振り返ると、先程まで寝ていた布団の中央に、丸い、何かが悶えている。
しかも喋った。
廊下から漏れる照明のおかげで、色が確認できた。
白と黄緑の物体だ。
「キャベツ?」
キャベツと比べればサイズは少し大きい。
子豚サイズくらいだ。
「失礼な!! 野菜と一緒にするんじゃ…わっきゃ!?;」
憤慨する謎の生き物を、両手でつかんで持ち上げ、揉んでみた。
モフモフとした、本物のぬいぐるみのような感触だ。
「なにコレ、バク?」
そう、見た目はバクなのだ。
本物と見比べて違うのは、ボディの腹部分は本物のバクと同じく白色なのだが、黒であるべき頭と尻周りの部分がキャベツのような黄緑色だ。
太い首元には緑と赤の縞柄ネクタイがオシャレに締められていた。
短い耳はピンと立ち、短いがゾウのような鼻をもち、額の中心には縫い目と腹周りはツギハギが見当たった。
子ども受けのようさそうなデフォルメである。
つぶらな瞳も愛らしい、が足立には可愛さなど興味はない。
「誰かが置いてったぬいぐるみ? よくできてるな~」
「引っ張るなァ! ワタが出るさ! ワタ!;」
容赦なく引っ張っている。
バタバタと暴れるバクのぬいぐるみは、ついにキレて自分の鼻を足立の額にぶつける。
「やめぃ!!」
「イテッ;」
パンッ、と平手を食らったような音が響いた。
足立の手から抜け出したバクのぬいぐるみは、足立と距離をとって睨みつける。
「あんた、未知の生き物に対していい度胸してるさっ」
「そのへんの人間よりも、未知な経験談が多い身でね。冗談はここまでにして、君、誰なの?」
打たれた額を擦り、足立はバクのぬいぐるみと目を合わせた。
「ツクモは、ツクモさ。足立透…、あんたに用がある。急ぎの用なのさ」
今日は招いてもない客がよく来ることに、足立はメンタルからくる頭痛を覚え、肩を落とした。
「参ったなぁ…」
現実世界で大人しくしているつもりだったのに、どうやら、見えない何かに巻き込まれる星回りのようだ。
.To be continued