01:Let me defend you
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「え…?」
バン、という音に伴い、自動改札機が勝手にすべて閉まってしまう。
電子カードを通そうとしても反応しなかった。
先程までいたはずの駅員の姿もどこかに消え、周りを見回しても人の気配を感じない。
朝の雑踏が夢だったかのように静かだ。
蒸し暑い気温も、肌寒いほどに冷えている。
「なにが…起きてるの?」
空気が張りつめ、夜戸の頬に汗が浮かんだ。
一度、来た道を戻って駅舎から出る。
今すぐにここから離れなければ、とても嫌な予感がする、と全身が警告していた。
ボッ!
「!?」
火を噴いた音が聞こえたかと思えば、辺りが赤い光に包まれ、背中に熱風を感じた。
駅舎を振り返って見上げると、壁が燃えて黒煙を上げている。
「火事…?」
先程までいた人間はどこへ行った、どうして改札が閉じてしまった、辺りが静かすぎる、なぜ突然駅舎が発火した、と状況が呑み込めない。
「消…防車…」
現在の危険な状況を解決させることを優先し、ケータイを取り出して消防車を呼ぼうとするが、アンテナは圏外を表示していた。
「通じない…」
どこにいてもいい、誰でもいい、人を探して呼んでもらうしかない、と判断した夜戸は、徐々に燃え広がる駅舎を背に、走り出そうとした。
「!」
明かりの消えた信号機の下に、人影を見つけた。
赤のカッターシャツに黒のズボン、鼻の下にヒゲを生やし、額に黒のバンダナを巻いた男だ。
ポケットに両手を突っ込んだまま威圧的に立っていて、夜戸を見つけると目を見開いた。
「あれェ? な~んで一般人がこんなトコにいるんだァ?」
火事のことはそっちのけで、夜戸の存在に驚いている様子だ。
「あの…、駅が…燃えて…」
夜戸は駅舎を指さすが、男は「ぷっ」と噴き出して笑う。
「なはははっ。当然だ! 俺が燃やしたんだからな!」
自慢げに言い切る男の様子に夜戸は硬直した。
男は、夜戸以外の人間が他にもいないか探すように辺りを見回しながら言う。
「ここはなんでもやっていい、俺だけの世界だ。燃やしたいモンはじゃんじゃんゴミのように燃やせる。『外』に影響が出るようだが、誰も俺がやったとはわからねェ…。そう…、誰にもわかるはずなかったんだ…」
「何…言ってるの…?」
ブツブツと呟き、頭を垂らしながら男がゆっくりと距離を縮めてくる。
ただならぬ様子に、夜戸は視線を離さず後ずさった。
男が右手をポケットから出し、夜戸に向かってかざす。
「!?」
何かが顔のすぐ傍を横切ったかと思えば、近くにあった街路樹が突然発火し、一気に燃え上がった。
「女ァ…、わかっちまったようだなァ?」
顔を上げ、不気味な笑みを浮かべる男の瞳は、金色を纏っていた。
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