28:Let me sleep
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1月5日土曜日、午後13時。空の色は相変わらずグレーだ。
日に日に黒ずんでいるみたいで、擦っても落ちない汚れに見えてくる。
足立と森尾は、昨日と同じ場所に座り、話しこんでいた。
「クリスマスに、夜戸さんと姉川がサンタの格好してて思ったけどよぉ、あの2人、けっこうあるよな」
体のラインがくっきりとしている服装だったので、脳裏に焼き付いていた。
胡坐をかいて手を口元に当てている森尾の顔は真剣だ。
「グラマーって言いたいのかな」
金網に背をもたせ掛けて足立は言った。
それからどうしてこんな話になんたんだっけ、と考える。
昨夜、夜戸とケータイを通じて会話したことを話した。
頼もしい言葉を掛けられているのに、夜戸は隠しているつもりだったようだが、何か不安を抱えている様子だった。
けれど、会話を終える頃には吹っ切れたように感じた。
母親にはちゃんと会えただろうか。
そしてやはりその話から夜戸と姉川のボディラインの話になった繋がりがわからなかった。
「夜戸さん、高1で成長が止まってんだろ? もし、年齢通りに成長してたら、凄いことになってたんじゃ…」
「お年頃だからね。まだまだこれからだとは思ったよ。今でも、大きさと柔らかさは申し分ない」
「触ったのか!?」
大きさはうっかり浴室を覗いてしまった時に拝見済みだ。
感触は、直接手のひらで触ったわけではないが、カバネのアジトから救出された時と、抱きつかれた時に把握している。
「世間は犯罪や行方不明が増えて大変だって時に、ここは平和だなぁ。なんの話してんだ」
呆れながら近づいてきたのは鹿田だ。
「おう、鹿田」
「昨日はいなかったけど、サボり?」
「頭痛っていう正当な理由で休んだ。今日はまだマシな方だ」
そう言いながら、鹿田は足立の隣に腰を下ろして膝を立たせ、こめかみをつまみ、空を睨みつけた。
「雨や雪が降るわけでもないのに、クソ重たい曇り続きだからか…。昼間だっつーのに薄暗いし…」
しかめっ面でブツブツと苛立ちを口にする。
外の空気でも吸えば楽になるかと思ったが、舌打ちが出た。
森尾に「おい、大丈夫か?」と声をかけられる。
「最近、ここに来る連中、減っちまっただろ? 雑居見てる限り、他の連中もこんな具合だ。ピリピリしてて居心地が悪ィ。罵倒し合って刑務官からお叱り受けてるのも見ちまった。収容者だけじゃなくて刑務官までイライラしてるみたいだ」
「犯罪と行方不明が増えたって情報は?」
足立が尋ねた。
「あ? あー…。最近新しく入った奴から聞いた話だからな。お前ら独居房と違って、その手の奴らが多いせいっつーか、おかげっつーか、雑居房は情報が集まりやすい」
首を掻きながら鹿田は気だるげに言う。
雑居房で嫌な思いを味わっている森尾としては尊敬するが、羨ましくはなかった。
「表沙汰にはなってねーが、妙な宗教団体も活動してるらしい。堂々と布教活動しねぇから、拠点も団体名もわからない、不気味な集団だ」
足立と森尾が真っ先に浮かべたのが、二又が関わっていた『欲望教』だ。
「関わった奴らはどこかに連れていかれるらしい。死者の集団だなんてオカルトっぽく言う奴までいやがる。まるで都市伝説だ」
寒気を覚えた森尾は唾を呑み込んだ。
「都市伝説ねぇ」
足立は「はは」と一笑するが、目は笑ってなかった。
「……夢路地…まだ続いてんのかな…」
森尾が足立に視線をやりながらぽつりと言う。
足立は「さぁ」と肩を竦ませた。
「都市伝説なんてはっきりしないものには、2度と振り回されたくないね」
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