26:I'm envious of him
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12月31日月曜日。
時刻は午後23時半を回ったところだ。
夜戸と姉川以外、各々の席に座ってコーヒーやカフェオレを口にしている。
「俺達がこんだけ探し回ってんのに、『カバネ』は相変わらず尻尾を出さず。知らない間に世界征服に飽きて解散とかしてねーかな」
「いくらなんでも都合よすぎ」
「わぁってるよ」
苦笑交じりの足立の返しに、森尾はため息をついて小皿に載ったアーモンド入りのチョコレートを1粒口に放り込む。
「シャドウばかり相手にしてる気がするね」
落合はトコヨエリアのマップを見下ろしながら呟いた。
「シャドウが集まって1つの個体になる頻度も多くなってきたし、大型ばかりが出現するようにもなった」
夜戸と共にカウンターの内側にいる姉川はかつて欲望が暴走していた時の事を振り返る。
あの時は自身が命令したからシャドウ達が一塊になったのだ。
ツクモの言った通り、確かに各々のペルソナの力は強くなったが、単独の戦闘はなるべく避けた方がよさそうだ。
「エリアも拡大していく一方だし、このまま世界が終わっちゃうのかなぁ…なんて」
スプーンを使い、カップの中の黒い水面をくるくると掻き回す足立。
「滅多な事を口にするもんじゃないさっ」
ツクモの叱咤に「ごめーん」とまったく悪びれていない返事をした。
「カバネの人達…、今、どうしてるのかな…」
落合は羽浦のことが気がかりだ。
「……………」
夜戸も、未だに行方知れずの二又と久遠の事を考える。
姉川と落合と一緒に久遠のマンションや二又の焼失した教会を当たってみたが、やはり形跡は見当たらない。
叔父の昌輝とも連絡が取れないままだ。
「カバネ…。あ、そうだ」
思い出したように森尾が顔を上げた。
全員の視線がそちらに集中する。
「こっちもこの際、チーム名みたいなのつけてみるとか?」
いい案だ、と言うように人差し指を立て、口角を上げた。
「えー。今更じゃない?」
足立はどうでもよさそうな態度をとる。
「チーム名?」
ツクモが目を輝かせた。
「勝手に、『捜査本部』とか『本部』が名前だと思ってた」
「あたしも…」
姉川に続いて夜戸も口にする。
「兄さん、いい名前でもあるの?」
落合の質問に、フフーン、と待ってましたと腕を組んだ。
「俺らのやってることって特殊だからな。ここが捜査本部だから…」
足立は嫌な予感がした。
「よし! 俺らは今日から『特捜た」
「却下!」
足立は両腕で大きなバツマークを示した。
言い切る前に足立が速攻でダメ出ししてくるとは思わなかった森尾は、驚いた顔で足立を凝視する。
「…でも」
「却下。断固拒否。決めたら僕は即辞退する」
「そこまで!? どうした足立」
両手でバツを作り直した足立が至近距離に近づく。
露骨な嫌悪顔だ。
「僕らもうガキじゃないんだから」
「お、おう…?」
ぽん、と肩に置かれた手の力は強く、文句も言えず気圧されてしまった。
姉川、ツクモ、落合は理由も聞けないほど驚いている。
「足立さん、コーヒーのおかわりありますよ」
事情を知っている夜戸は足立の心情を察し、話を逸らした。
「あ、でも、もうそろそろ時間かな」
ケータイに表示された時刻を見ると、もうすぐ1分前だ。
夜戸と姉川はすでに用意していた出来立ての年越しそばをカウンターに並べた。
夜戸は一度カウンターを出て、カウンターテーブルの隅のテレビに入り、眠そうに目を擦るピンク生地で白い水玉模様のパジャマを着た月子を連れてくる。
この日を迎えるために、睡魔と奮闘した様子だ。
そして、時計の針がすべて上を指した。
「せ―――のっ」
ツクモの掛け声に、全員が「あけまして、おめでとうございます」と声を揃える。
1月1日火曜日、午前0時。
現実世界は2013年を迎えた。
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