23:I knew you
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足立は人差し指で宙に「×」を描く。
「君は間違ってるってわかりやすく、顔に「×」って書いてあげよっか?」
「…は?」
夜戸の笑みが引きつった。
足立は冷静に、落ち着いた口調で話す。
「思い返してみれば、一連の事件は、君にしては抜け目がありすぎるんだよ。バツだらけだ。森尾君の時は、2回目の面会で赤い傷痕をつけていれば、一緒にいた久遠に疑いの目が向けられた。落合君の時だって、わざわざ『“右”腰の傷痕』なんて口にしなくてもいい。古傷の事を知らなかったにしても迂闊過ぎる。僕が推理しなくても、いずれみんな気付いてただろうさ。少なくとも違和感はあったはずだ。君を疑うみたいで口にしなかっただけ」
ここまで、夜戸は大人しく聞いていた。
胸の中は、不安と焦りが膨らみながら渦巻いている。
反論しようと口を開いた。
「そして、疑いを一度も久遠に押し付けたりしなかった」
足立は余地を与えない。
「君さぁ、そもそも僕らに隠す気あったの?」
足立は何かを確信している様子だ。
夜戸は「ハッ…」と一笑し、苛立ちを誤魔化すために自身の前髪をつかみ、険しい表情を向けた。
「過ぎた事を…。今更…、ベラベラと推理ごっこですか? それこそ無駄! 無意味! ほじくり返したところで何もわかるわけがない! あたしがみんなをバカにしてたって事実だけ!!」
「バカはどっちだ」
怒気を含んだ物言いだ。
足立は、夜戸の方へ歩み寄っていく。
「君に悪役は似合わないよ。ましてや、カミサマ役も大根じゃないか」
足立の背後からイツが曲刀を振り下ろすが、回り込んだマガツイザナギの矛に阻まれた。
「…ッ!」
休む暇など与えない。
イツの方がスピードがある。
一瞬の隙を狙う為、打ち合いに持ち込もうとした。
「!?」
マガツイザナギが自ら飛び込んできた。
振るわれた曲刀が狙う予定になかったマガツイザナギの左肩に落とされる。
「ぐ!」
苦痛を浮かべる足立だが、歩行は止まらない。
マガツイザナギは空いた手で肩に入った曲刀の刀身を上から押さえつけて抜けなくさせ、矛を思い切り突き出した。
ドス!!
「ああぁッ!!」
矛の刃は、イツの胸を貫き、雷撃を流し込んだ。
イツは絶叫を上げた表情を浮かべ、やがて雷光と共に消えていく。
マガツイザナギも捨て身の大きなダメージを受け、床に倒れる前に消えた。
身体を襲った痛みにふらついた夜戸は、倒れまいと踏み止まる。
足立はすぐ傍まで来ていた。
ビクッと体が小さく跳ね、顔を強張らせる。
「ま、待って…」
「押し付けられた役を、嫌々やってるようにしか見えないよ。誰が楽しめるのさ、そんな舞台」
「嫌…。待ってよ…」
後ろにたじろいだが、壁に背をぶつけ、追い詰められた。
「今すぐ下りろ。俺に道化役をさせるな」
リボルバーを持ってない、反対の左手を伸ばされる。
触れることは許されない手だ。
(あたしが欲しいのは、そっちの手じゃない)
パンッ、と乾いた音とともに払いのけ、心が悲しく揺れた。
「あたしに触らないで」
勢いよく伸ばされた手に握られたナイフの切っ先は、足立の胸に向かう。
その刹那、足立がこちらにリボルバーを向け、引き金にかけた指の動きを追った。
ハンマーは起こされている。
足立の方が速い。
(正解です)
一抹の正気が、大きな赤丸を思い浮かべた。
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