00-1:Just because…
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1週間後、クラス内のグループは大体決定していた。
あたしは特に誰ともつるんでいるわけではなかったが、誰かと組んでいるだろう、くらいには思わせている。
授業と授業の間は予習と復習。
昼休みなどは教室で弁当をひとりで済ませ、勉強道具を抱えて図書室へ行った。
ずっとひとりで教室に入り浸ると、必要以上に構ってくる人間がいるからだ。
いつもひとりでかわいそうだ、と思われるのもなんとなく面倒くさい。
「……はぁ…」
小さなため息もつきたくなる。
静かなはずの図書室は、他の生徒で騒がしい。
雑談ばかりで、本を読もうとしなければ借りようともしない。
図書委員も注意してほしい。
避けるように、自然な足取りで奥の席に向かう。
空席を見つけて席に着いて斜め左を見ると、筆箱、ノート、教科書、参考書がひろげられていた。
先客がいるようだ。
見たままの通りなら、同じく勉強目的か。
それならまだ安心。
他の席は空いてないし、斜めでよければ同席させてもらおう。
筆箱の下にある、閉じられた数学ノートには、あたしの方から見ると逆さで読みにくかったが、学年は3年、『足立 透』と相手の名前が書かれてあった。
進学希望なら、この時期から慌ただしくするのは珍しい事ではないか。
あたしも3年になれば同じだ。
手に持っていたノートを置き、参考書を探しにいく。
「ん…っ」
この図書室は資料が豊富なのはいいが、棚が高い。
欲しい参考書が一番上の棚にあり、爪先立ちしても数センチ届かない。
カッコ悪くジャンプしても、指先に本の背が当たるだけで取れなかった。
この棚の高さ、絶対女子の平均身長より高い。
「はぁ…」
不毛とわかれば諦めも早かった。
小さい脚立、どこかに置いてあるかな。
「何してんの」
頭上を、伸ばされた手が通り過ぎ、目的の参考書が取られて目の前に突き付けられる。
「これ?」
両手で受け取ってから、ぶっきらぼうに言う相手の顔を見た。
「そこに突っ立ってられると、僕のが取れないんだけど」
おでこが見える短髪、大きなメガネ、曲がったネクタイ。
猫背でわかりにくかったけど、そこそこ背は高い。
「ちょっと?」
聞いてるのか、って顔をされた。
怪訝な目を向けたまま、あたしの顔の近くにあった本をとる。
何か。
何か喋らないと。
お礼を言わないと。
「喋れるんですね」
あ。
彼は呆けた表情で取ったばかりの本を足下に落とす。
いつか真正面から顔を見るという望みは呆気なく叶い、それどころか、声も聴いて、会話?もできた。
ただ、日頃のコミュニケーション不足が祟ってしまったのか、失敗した、っていうのはわかった。
これが、足立透先輩との、初めての面と向かい合っての出遭いだった。
まあ、結果的に言うと、彼とは恋人どころか友人にもなれなかった。
でも、これだけは言える。
あたしにとっては、かけがえのない特別な人だった。
何者にも代えがたい…。
足立先輩…、
あなたには伝えることができなかったけど…。
.To be continued