23:I knew you
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ツクモのミカハヤヒもやられ、立っている人間は姉川と月子だけとなり、追い詰められた状況に陥った。
「う…。クソ…ッ」
「重……っ」
森尾と落合の背に、シャドウ達が圧し掛かって動きを封じ、手も足も出ない。
「2人とも…!」
姉川は駆けつけたかったが、シャドウが距離を窺いながら、ツクモを抱きかかえた姉川を囲んだ。
いつ攻撃を仕掛けて来てもおかしくはない。
このまま全滅してしまうのか。
「おねーちゃんは、人にも現実にも興味がなかったし、自分を持とうとしていなかった。だから、顔色ひとつかえずに10年もやってこられた…」
月子が淡々と言いながら、こちらにやってくる。
「あの、おにーちゃんのせいだ」
足立の事だと姉川は思い当たる。
「悲しいことだけど、もう一度ゼロに戻すよ。こういう時って、こう言うんだよね。今まで、ごくろーさまでした」
森尾のもとに着くと、しゃがんだ月子は森尾の右手のひらにある赤い傷痕に触れた。
「なにを…」
子どもの力だが、魔女のシャドウに気力を搾り取られた森尾は抵抗もままならない。
赤い傷痕から、ズルリ、と引きずり出されたのは、森尾のペルソナであるバールだ。
普段武器として使っているものとは違い、全体が黒曜石で出来ている。
「キレーなペルソナ」
美味しそうなご馳走に、月子は目を細めて笑った。
「やめろ…! 返せ…!!」
唸りながら震える指先を伸ばす森尾だが、背中にのっていた内の1体のシャドウが森尾の右腕を踏みつけた。
「う…!」
月子が口を開け、かじりつこうとする。
やり方もツクモと同じだ。
ペルソナを食べて、赤い傷痕を塞ぎ、この世界から追い出そうとしている。
夜戸との関わりを、完全に断とうとした。
「あ!」
姉川は声を上げる。
腕から飛び出したツクモが、自分達を囲んでいたシャドウの頭を踏み台にして月子に飛びついた。
「きゃ!」
尻餅をついた月子は、森尾のペルソナを落とした。
「させない…! 誰も、欠けさせないさ…!」
ツクモは月子の腹にのって言い放つ。
「ころすわけじゃない。これが、一番いい方法なんだよ?」
「よくないさ! みんな、大切な誰かの為に、望んでここにいる! アダッチーも、明菜ちゃんも、置いていけないさ!」
月子は、無意識にコブシを握りしめる。
「…月子も、大切な大切なおねーちゃんが望んだから、叶えてあげたいだけ…」
月子の手が、ツクモの背にある赤い傷痕に触れた。
「ただのぬいぐるみだったあなたが、ジャマしないで…!」
「!!」
ツクモの赤い傷痕から引きずり出されたのは、白い陶器にヒマワリの模様が描かれた、小さなカップだった。
取っ手の部分だけ取れている。
「あ…」
ツクモの体が、コロン…、と力なく床に転がった。
「ツクモ――――ッ!!」
姉川が叫ぶと同時に、背後からシャドウ達が走り出した姉川を取り押さえる。
森尾と落合は、ただのぬいぐるみのように動かなくなったツクモの姿に、絶句するしかなかった。
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