22:No time left for hide and seek
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下へ、下へ、螺旋階段に従いながらぐるぐると下っていく。
欄干がないため、できるだけ壁際に寄りながら進んだ。
「下りにくいってのに…!」
向こう側からこちらに上がってきたシャドウに、舌を打った落合は容赦なくオノを振り下ろす。
真っ二つにされて燃え上がるシャドウが落としたのは、仮面の破片だ。
ツクモの食い意地は止まらない。
危うく階段の端を越えて建物中央の空洞へ落ちそうになり、森尾に足をつかまれて引っ張られた。
「落ちたら、ぬいぐるみの体もバラバラになるぞ! 裁縫は苦手なんだ」
「万が一ツクモがそうなっても、絶対モリモリには頼まないさ」
「落とすぞ」
はっきりと言われたことがムカついて凄むと、ツクモは体を勢いよくよじって森尾の手を離れ、すぐ傍まで近づいてきたシャドウに「とう!」と丸腰で体当たりし、階段から突き落とすと、ぽかんとしている森尾に「フフン」と鼻を鳴らしてどや顔を浮かべた。
「はしゃいでる場合じゃないよ」
呆れながら、足立は間近のシャドウを蹴り上げ、素早くリボルバーで撃ち抜く。
そのまま、シャドウの足止めをものともせず、足立達はついに広い場所へと下りた。
部屋と呼べるものではない、大理石の床で造られた、広大な円状の踊り場だ。
今はシャドウの姿はない。
それどころか設置物も見当たらなかった。
奥には、別の階段がある。
「奥にはまだ下へ降りる階段がある…。ゲームに例えるなら、中ボスクラスが出てくるステージか」
アゴに指を添え、通常のゲーム展開を思い浮かべる足立に、「例えんな」と森尾が叱咤する。
「…!」
姉川ははっと気付いて顔を強張らせた。
奥の階段から、誰かがこちらに近づいてきている。
シャドウの気配ではない。
よく知った人物だ。
「ねえ…、中ボスっていうか…」と動揺を滲ませて口にする。
反響する靴音に、足立達の視線は奥に集中した。
「相変わらず、騒がしいね」
奥の階段から現れたのは、夜戸だ。
「図書館では、お静かに」
無表情の口元に人差し指が添えられる。
表情も、喋り方も、声色も、足立達が普段見聞きしていた夜戸のままだ。
金色の瞳を除いては。
「まさか、本人が出てくるなんて」
足立は、最深部で待ち構えていると思っていた。
「よく来れましたね。ここはトコヨと違って、簡単に侵入できないはずなのに」
「僕にとっては懐かしい、正規ルートだ。攻略本もいらなかったよ」
腕を広げて茶化す足立。
夜戸は腕を組み、少し間を置いてから口を開いた。
「それで、こんな場所まで来て、何しにきたの?」
「迎えに来たさ!」
大きく即答するツクモに、夜戸の表情に変化はない。
ツクモから足立達に視線を上げる。
「…みんなも同じ理由?」
「……………」
頷きもなかったが、強い眼差しが肯定していた。
夜戸はため息をついて肩を落とし、右手で目を覆って落胆を露骨に見せつける。
「懲りないね。迎えに来てどうするの。何がしたい? 警察に突きだす? みんなに傷をつけたのは否認しないし、傷害罪で起訴は可能かもしれないけど、あたしを止めた事にはならない。だから、世界の終わりは止められない」
止め方は言わなくてもわかるだろう、と冷たい眼差しが足立に向けられた。
「もっと張り合いのある理由はないの?」
「じゃあ、こう言ってあげる。ぐだぐだと考えるのは、後回し。理由はイラナイんでしょ?」
足立はリボルバーを構え、銃口を向ける。
森尾と落合とツクモが目を見開いた。
「大人しく連行される気がないなら、全力で抵抗していいよ。平和的解決は、今の君が望むものじゃない」
「……………」
夜戸の口元が不気味にニヤリと笑った。
「確かに。理由なんて無駄話」
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