22:No time left for hide and seek
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床に仰向けになっている夜戸は、黒いナイフを遠い天井に掲げて見つめる。
燃え盛る破壊衝動、値札がついた形ある愛への強欲、ぬいぐるみの身で芽生えた願望、行き場のない殺意、他人から理解されない真実の追求、無力な己への憤怒、ひとりよがりな母性愛、逃げ道を捜す罪悪感、自傷行為でしか癒えない孤独、見え見えの愛想に覆われた嫉妬…。
普段見えていた、黒い影以外の、何か。
赤い傷痕を持つ人物はすべて、仕事や交流で関わってきた人間ばかりだ。
条件は理解できたが、理由はわからないままだ。
なぜ、傷痕をつけることができるようになったのか。
心当たりと言えば、10年忘れていたはずの、足立の存在を思い出してからだ。
それと…。
黒いナイフを握りしめた手を、自身の胸に刻まれた赤い十字の傷痕にのせた。
「…!」
胸の中がざわつく。
自分以外の誰かが傷痕に触れた気がした。
半身を起こし、口元に弧を描く。
「誰ですか…。人の心に、土足で上がり込んできたのは」
頭の中には、すでにひとりの男が想い浮かんでいる。
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