21:She may have told a lie
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砂嵐の中にあるのは、どこかへ進む夜戸の背中だ。
姉川と落合が見た時と同じ景色だ。
「明菜ちゃん!?」
「本当に…テレビの中に…」
初めて見たツクモと森尾は食い入るように画面を見る。
「午前0時にテレビを見ると、運命の相手が映る…なんて…都市伝説もあったなぁ…」
噂とは違うことは知っている。
「雨の日であって、雪の日じゃなかった気がするけど」
姉川がそう言うと、「ああ、そうだね」と同意する足立だったが、テレビの背後にあるベランダの窓から見えた雪景色に、「まてよ…」と考え直す。
「この、ノイズの画面って、みんな、なんて言ってる?」
「え。ノイズじゃないさ?」
名称を知らなかったツクモ。
「「砂嵐」」
声が被る姉川と落合。
「……ポルターガイスト」
何を思い出したのか、森尾の顔から血の気が引いていく。
「ホラー映画にあったねぇ。呼び方ぜーんぜん違うけど。スノーノイズっていうらしいよ。どちらかと言えば、こんな雪の日こそぴったりだよねぇ」
足立は笑いながらそう言って、テレビ画面に手を伸ばす。
すると、まるで水面に指先が触れたみたいに、波紋を描いた。
森尾達がぎょっとする。
さらに足立はそのまま手を突っ込んだ。
落合と森尾は慌ててテレビの後ろに回って確認するが、足立の手は貫通していない。
お得意の手品という様子でもなかった。
「ウソだろ…!?」
「本当に、テレビの中に手が入ってる…! 透兄さん、なんともないの!?」
「んー。今のところは…」
軽く出し入れしてみたり、掻き回してみるが、何かに触った感じでもない。
「どれどれ」
今度は、両手でテレビの枠をつかんで体を支え、大胆に顔を突っ込んでみる。
「なぁ!?」
尻餅をつきかける森尾だったが、姉川が背中に手を当てて支えた。
「あー、なるほど~、こうなってんだー」
テレビの向こうから足立の声がエコーがかかったように響き渡る。
一度、顔を出して振り返った。
「…見てのとおり、僕には、テレビに入る力がある。きっと、この先がカクリヨだ。これからこの先へ行くけど……」
面々の面構えを見る。
驚いてはいるが、躊躇っている表情ではない。
「ウ、ウチらも行く!」
「先に行かせたりしないからね!」
足立に先に行かれないように、姉川と落合は足立の服の裾や手首をつかんだ。
「わかったわかった」
足立は両手を小さく挙げてなだめる。
「…なら、先に俺が行く」
名乗り出たのは、一番驚いていた森尾だ。
「さっきすごいビビッてたのに…」
「やかましい」
からかう口調の足立を睨む。
「さっきからみっともないとこばっか見せちまってるし、どうせなら、最後より最初がいい。早く、俺から入れろよ」
「……………」
テレビの前に立つ森尾に、足立はゆっくりと近づいて手を伸ばす。
ふう、と一呼吸を置いた。
「気を付けなよ」
肩に手を置いて囁く。
「え? うわ!?」
胸倉をつかまれ、そのまま力任せにテレビの中に森尾の体が放り込まれた。
「入っちゃったさ…」
ツクモは画面に前足をつく。
足立の手を借りないと入れないようだ。
「ツクモちゃんは」
「行くに決まってるさ!」
「じゃあ、お次にどうぞー」
「きゃ!?」
ツクモをバレーボールのように、ポーン、と下からサーブを打ってテレビの中に入れた。
「もう少し優しく入れるさ~」とテレビの向こう側から文句が聞こえた。
今度は落合か姉川だ。
森尾を入れてから、ドクドクと鼓動が早鐘を打っている。
嫌な汗も出てきた。
悟られないよう、意地悪な笑みを浮かべて言ってみる。
「ちなみに、全員入れて僕がどこかへ行ったら帰ってこれないかも…」
「冗談はええから!! 早よせぇ!!」
「入れなくなるでしょ!!」
心なしか、だんだんと弱まってきた画面に焦燥感を覚えた落合と姉川は、足立の腕にしがみつき、「せーのっ!」とテレビ画面へとダイブした。
「うわ!!」
恐れ知らずな行動に意表を突かれた足立は、2人とともに、夜戸がいるであろう、未知の世界であるカクリヨへと落ちていくのだった。
懐かしさを覚える浮遊感だ。
.To be continued