00-9:There is something that I want to tell you
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12月13日木曜日、冬の朝は冷える。
母は出かけたところだ。
あたしはリビングのテーブルにひとりで着き、バターをのせたトーストをかじり、自分で淹れた温かいコーヒーを飲みながら、朝のニュースを見ていた。
どこかの住宅街が映されている。
そこで高校2年生の男子が死亡したらしい。
報道された名前は、朝霧天真。
見覚えのある苗字に、手を止めて釘付けになった。
死因は、自分の喉を鋭利な刃物で掻っ切ったことによる自殺だった。
しかも、夜中に突然奇声を上げて住宅街を走り回るという奇怪な行動をとったあとに起きたらしい。
「朝霧…」
偶然だろうか。
死因は違うが、10月のニュースでは朝霧一家が無理心中をして亡くなり、報道されていた。
苗字も聞き慣れないものだから、あたしが過敏になっているだけかもしれない。
ニュースに意識を向き直す。
自殺に使用された凶器は、まだ見つかってないらしい。
「明菜」
「!」
危うくカップを落としそうになった。
揺れて波打ったコーヒーがカップの淵で打ち返る。
「父さん…」
父がリビングに入ってきた。
何も言わずに向かいに座る。
あたしは席を立って父の分の朝食を用意した。
トースターに食パンを入れてセットし、コーヒーをカップに注いで先に渡す。
珍しい時間帯に会った。
向かいに座るということは、何か話があるのだろう。
先日はテストの結果を見せた。
相変わらず、当然といった態度だけで褒める事なんてしなかったし、その時は夕食の前だった。
「トーストなら自分でやる。いいから、座りなさい」
言われるままに、目の前に座り直す。
妙な緊張が走った。
「…学校はどうだ?」
「え」
切り出され方に困惑した。
父は一度咳払いして聞き直す。
「どう過ごしている? 休み時間とか」
先程の質問よりは答えやすくはなった。
「……昼休みは、図書室で勉強してます」
「誰とだ」
いきなり肩をつかまれる感覚だった。
動揺を隠し、カップに口をつけるが中のコーヒーの味がしない。
「……ひとりです」
「本当だろうな?」
まるで尋問だ。
「私に友人はいません」
これだけは目を見てはっきりと答えられた。
そう、『彼』は友人ではない。
友人ではないけれど。
「…あの、私…行きますね」
コーヒーを少し残してしまった。
席を立って皿とカップを片付ける。
父はカップを見下ろしたままだ。
視線が合わなくてよかった。
あたしは逃げるようにカバンを持ってリビングを出て行く。
胸の中の隠し物を見つけられてしまう前に。
足立先輩は、友人と簡単に呼べない存在なのは確かだ。
靴を履いて玄関を出てから、ふと、胸に手を当てた。
足立先輩にとって、夜戸明菜という存在は何なのか。
願わくば、胸の内にそっといてもいい存在であってほしい。
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