18:That’s too bad
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12月5日水曜日、午後19時。
羽浦ういの気分は最悪だった。
同行していた小栗原は現実に戻され、同じ『カバネ』であるはずのY(二又)とQ(久遠)からは一切の連絡がない。
姉川のペルソナの探知能力はケタ外れだ。
トコヨを歩き回ればすぐに見つかってしまうだろう。
相手は6人。
ペルソナを封じる能力を持っていたとしても、太刀打ちできるはずがない。
家に帰るわけにもいかず、ネットカフェで泊まりこんでいたが、所持金も底を尽きそうだった。
もう少し安いネットカフェがあったはずだ。
距離があるので、公園前のバス停で数分待ってやってきたバスに乗る。
そのバス停で下りた乗客もいて、乗ってすぐに座ることができた。
近くに年配の乗客もいないので、座ることに罪悪感はなかった。
乗降口の近くには、吊革につかまった乗客がいる。
次の駅前のバス停で下りる気なのか、詰まっていた。
「!」
高校生くらいの女子と、その後ろにスーツを着たサラリーマン風の男性がいる。
羽浦は男性の手の位置に気付いた。
バスの揺れに任せて女子の尻をスカートの上から触っている。
(あの子、痴漢されてる…!)
自分がされているような気がして、憎しみが生まれた。
こちらの視線に被害者も加害者も気付かない。
バスが停車した。
堪能した男性が下りようとした。
羽浦は追いかけて磔にしてやろうと立ち上がる。
「待ちなよ」
しかし、呼び止めたのは、女子の方だった。
男性は「え」と振り返る。
バコッ!
鼻っ柱に、女子の鉄拳が炸裂し、モロに喰らった男性は乗車口から吹っ飛んで地面に転がった。
車内が騒ぎになる。
「さっきからベタベタ気持ち悪いんだよ! このチカン! 散々触った挙句に平然と降りようとすんな!!」
鼻血を出して悶える男性に罵声を浴びせる女子。
女子が何をされていたのか確認できなかった運転手は困惑している。
このまま発車するべきなのか、すぐに警察を呼ぶべきなのか。
羽浦は女子に走り寄り、乗車賃を払ってから女子の手首をつかんで一緒に下りた。
「へ?」
女子は戸惑いながら羽浦に連れていかれる。
目撃者は羽浦だけかもしれないし、他の乗客は見て見ぬふりをしていたかもしれない。
公衆の面前で血が出るほど殴るのもまずかった。
あとあと面倒なことになる、と羽浦にはわかっていた。
「羽浦さん?」
バス停から離れたところで、女子が声をかけた。
「!?」
びっくりして立ち止まり、振り返って相手の顔を見る。
女装した、落合だった。
「あ…んた…」
男である落合の手首をつかんでいることにはっとし、振り払うように放した。
驚いて目を見開いた落合だったが、困ったように笑った。
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