17:This world…
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時刻は午前5時過ぎ。
空が白んでいる。
夜戸が住んでいる町の駅前では、人がまばらに行き交いしている。
スーツ姿のサラリーマンやOL、ジャージや制服を着た学生…。
早朝出勤、夜勤帰り、部活、プライベートなど、様々な理由で歩いているのだろう。
自分も家を目指して歩く。
横断歩道が見えてきた。
「毒ガス事件の犯人が自首したって」
「知ってる。でも中学生だから報道で名前は伏せられてた。公開しろっつーの」
「誰も死んでないし、すぐに世に出てくるんだろうね。一生檻の中から出て来なきゃいいのに」
「相手がガキでも、大ごと起こしたら死刑にすればいいんだ」
「教会が焼けたニュースは見た? 放火かもだって」
人が行き交えば、会話も情報も飛び交う。
ロータリーにある横断歩道の信号が赤色に切り替わった。
夜戸は立ち止まる。
「放火の犯人って捕まってなかったっけ? 名前忘れたけど」
「ここんとこ立て続けに事件ばっかだな。飽きねえけどさ」
「宝石窃盗事件とか、怪盗っぽくて好きだったなー。ひとりでやってたとかありえねえって。何か陰謀を感じる」
「無差別殺傷事件の犯人、見つかったって」
「もうとっくに知ってるって。母親が庇ってたんだろ。子が子なら、親も親って…」
「警察は何やってんだ、役立たず」
「去年は刑事が人を殺してるし」
「裁判ってどうなってたっけ。死刑だっけ?」
「始まってねえけど、死刑だろ? バカは死ななきゃわかんねぇ」
そんな会話をしている何人かが、赤信号に構わず渡っていく。
ケータイを見ながら。
友人と会話しながら。
手を繋ぎながら。
赤信号の色を見つめながら。
その時、大型トラックが、赤信号に従わない通行人に突っ込み、辺りは瞬く間に惨状……ということにはならなかった。
轢かれたとしても、大型トラックに被があるのだと騒がれる。
想像した夜戸は小さなため息をつく。
目に見えるルールがあっても、ルールに従わない者ばかりだ。
赤は止まれ。
緑は進め。
簡単なことに従わないクセに、ルール違反を指さして罵っている。
捜査本部では皆無だったものが、胸の内にべったりと貼りついた。
(世界が、あんな場所だったらよかったのに)
目元に触れる。
メガネは姉川に預けたままだ。
レンズがなくても、目に見える世界は変わらない。
「世界は…、理不尽」
口角を上げると同時に、信号が「進め」に切り替わった。
.To be continued