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森尾と落合が戦闘中の頃。
夜戸の右のこめかみをかすめた小型ナイフは天井に突き刺さった。
わざと外されたようだ。
ツ…、と浅く切れたこめかみの傷口から一筋の血が流れ落ちる。
「……………っ」
影久は、天所に突き刺さったナイフと、2人の様子を交互に見た。
顔色は真っ青で、駆けつけるどころか、娘の名を口にする事もできなかった。
Yは足立の顔のままようやく立ち上がる。
水分を吸い上げてシミが広がるように、先程までの影久の服装がみるみると足立の服装に変わる。
黙ったまま本物と並べば、双子より見分けがつかないだろう。
「オレの依代は刃物や銃器じゃねーんだ。多少の飛び道具は許せよぉ?」
ベェ、と出した舌は、本来のYのものである逆十字のピアスがついたままだ。
「うお!?」
ナイフを構えて夜戸が切りかかってきた。
Yは反射的に後ろに飛びのいて避ける。
「二又楽士(ふたまた らくし)…。その姿だけは許さない」
Yは目を大きく見開いた。
驚きが隠せない。
「マ…ジか。この場所にたどりついてまさかとは思ってたけどよぉ…。思いっきり身バレしてんじゃねーか…! しかもフルネーム。『Y』なんて入ってねーのによくわかったな!」
「『Y』とまったく似た漢字がある。読みは、『あげまき』・『ふたまた』。二又の名前には…、聞き覚えがあった」
「二又…」
影久も思い出す。
「ははは。だったら、オレのやり方はご存知だろうよぉ…! ジャマだと思った奴に何をするのか…」
「ええ。…だから、先手は打った」
「それで一人で来たってのか? オレにとっては嬉しいシチュエーションだけどなぁ」
Y―――二又は足立の姿で、声で、嘲笑う。
夜戸はそれがはっきりと『不快』だと感じた。
「夜戸さん…、君が『カバネ』の仲間になってくれるなら、この姿で、君が僕(足立)に望むこと、本物の代わりになーんでもしてあげる」
足立の口真似をしながら、両腕を広げる。
「好きなだけ、僕に触っていいんだよ? 僕だけは君を否定なんてしないんだからさ」
「――――!!」
『俺に触るな』
過去から蘇った鋭利な言葉が、夜戸の脳裏をよぎり、心臓を冷たく包んだ。
その顔を見た二又は「ヒャハハハッ」と狂ったように笑った。
「そう! そう! その目、その顔…! 最っっ高~~!」
「……………」
(うるさいな…。あの人…)
ただ静かに、煩わしさを感じた。
これからやることが決め、呼吸は落ち着きを取り戻す。
夜戸はナイフを握りしめて一気に二又に詰め寄った。
殺意の刃が、二又の首を狙う。
2度と、その声を出せないように。
「やめろ!!」
娘の殺意を察した影久は止めるために手を伸ばした。
間に合う距離ではない。
(もう……ダマラセヨウ)
ギンッ、と高い金属音が鳴り響く。
「どうせなら、2人きりで会いたかったぜぇ」
夜戸と二又の間に、人影が割り込んだ。
長く鋭い2本の刃をもつ鉤爪が、夜戸のナイフを防いでいる。
Qだ。
「シギヤマツミ」
外套を着たままのQが、ペルソナを召喚する。
頭は髪のように白い羽毛で覆われ、グレーカラーで長く真っ直ぐなクチバシのマスクは顔を覆い、マスクの唯一穴が空いている右目の部分からは金色の鋭い目を覗かせている。
首には黒革の首輪をつけ、胴体は人間の女みたいで、露出の高い黒のレザースーツを着ていた。
両腕には翼を持ち、手足は鳥そのもので、両手には2丁のサブマシンガンを握りしめている。
両手の銃口は夜戸に向けられた。
「!! イツ!」
夜戸の頭上から弾丸の雨が降る。
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