双星の使者

崩れて傾いた建物の奥の扉を開ける。
すぐ上を、暗黒竜が通って行った。
irisが身をすくめる。
禍々しい景色が広がる。

雷鳴が轟き、暴風が容赦なく吹き荒れる。遠くには暗黒竜が巡回しているのが分かる。
過酷な道になるだろう。


段差を登って歩き出した。
あまりの強風に、思わず顔を覆ってしまいたくなるほどだ。
何かが崩れる音がする。sirutoはサッと大きな岩の影に隠れる。

傍で赤い岩がプルプルと震えている。これはなんなのかと思い見つめていると、sirutoが教えてくれた。

「これは近くにいるだけで光のチカラを吸い取られてしまうの。万が一触ったりしたら大怪我をしてしまうわ。」

『ヒッ…!怖い…。』

そう思った直後、暴風で飛んできた岩が叩きつけられる音がした。
あんなものに当たったらひとたまりもない。

暴風域は恐ろしい。
その事を改めて認識する。

岩が止んだことを確認し、sirutoはまたirisを連れて歩き出す。
段差に隠れながら岩をやり過ごし、順調に歩みを進めた。

土管のような通路にたどり着く。
闇に汚染された水が少し溜まっている土管をくぐる。

その先にも道はあったが、とても足場が悪そうだ。
しかも絶妙な位置に蝕む石がある。

足を滑らせでもしたら…考えたくもない。

「落っこちないようにね。ここからは暗黒竜の巡回ルートと進む道が重なるから、気をつけながら素早く進むわよ。」

『分かった。』

足場が屋根のように張り出しているところに隠れながらタイミングを伺う。
右手の暗黒竜が下に潜り込んだところで素早く通り過ぎる。

狭い配管の足場を進み、あいている穴から中に入る。
闇のカニを光の呼び声でひっくり返し、さらに進む。

配管を出たあとの暗黒竜を警戒しながら出る。

そしてついに最終関門。
この坂を登れば、使命の終着点、原罪へたどり着く。

遮蔽物が少ない。
ここは砂埃で視界が悪い上に岩が飛んでくる。さらに暗黒竜の巡回ルートになっているのだ。
チカラ尽きた星の子は数知れず。一歩間違えれば死。一番危険な場所なのだ。

新しいものから古いものまで、数多の同志たちの石に変わり果てた骸が見える。
目の前の骸が、飛んできた岩に削り取られた。

irisはぎゅっとsirutoにしがみついた。

僅かな岩の物陰を使いながら進む。
そして、暗黒竜が左に通り過ぎるまで待つ。

「いくわよ!」

暴風吹き荒れる死の坂を突き進むsirutoとiris。風が容赦なく二人を吹きもどす。
光の子の救出を忘れずにして、建物の中に飛び込む。
その後ろを暗黒竜が通過した。

「はぁ…はぁ…。」

『怖かったぁ…。』

二人は固く抱きしめあった。
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