知るが罪か、知らざるが罪か

そこには、美しい景色が広がっていた。小さいドームのような建物、飛石のようになっている石が、上の方まで続いている。
規則正しい動きで移動する正方形の四隅を三角に削ったような石の足場に、透明なマンタ。
何もかもが目新しかった。

『書庫って他のエリアと随分違うよね…。』

「そうね。」

『建物の中のはずなのにそうじゃないみたい…。』

「上に上がるだけの構造なのに広く感じるわよね。」

『面白いなぁ。』

「静かで落ち着くから、私はここが好き。」

『そうなんだぁ。』

irisは目を輝かせてあちこち見回す。

「ありとあらゆる叡智がここに詰まっているのよ。」

『そうなんだ!』

「調べ物をするのにうってつけ。でも……闇に侵蝕された者を救う為の文献が根こそぎ無いの。」

『え……。』

「何かあったのかしら……。」

二人はううん……と考えた。

「ここで考えても仕方ないわね……さぁ、上に行きましょう。」




祭壇のようなものが上部にある飛石の方面に向かうと、マンタの骸があった。irisがsirutoにピッタリとくっつく。やはり骨はあまり得意ではない。
骨の周りに置いてあるキャンドルに火を灯す。
すると、透明なマンタが現れた。
そのマンタに光の呼び声で語りかける。

「irisも真似して。」

『うん。』

一つの記憶が救われた。

もう一方の飛石の上に石碑のようなものがある。白いキャンドルに火をつけ、精霊を呼び出す。
念動力で空中浮遊する精霊だ。
やり方を教えてもらう。

『どこでも座りたい放題だね!』

「使い方違うと思うわ。」

『えー?あ、ほんとだ、ちょっと足が疲れた…。』

「意外と疲れるのよ、これ…。」

書庫は不思議な精霊が多い。

透明なマンタが運んでいる起動装置に火を灯して真ん中に寄せる。
全部で四つだ。

瞑想して起動させた。

次のエリアにはほとんど何もなかった。
あるのは巨大生物の骨のみだ。
その上に隠れるようにして居る光の子を救出する。

『ここ、骨が多いね…。捨てられた地ほどじゃないけれど…。』

捨てられた地は、恐ろしすぎて、気にする余裕なんて無かった。しかし、ここは静かなためとても気になってしまう。

「生物の記録も保管していたりするのかしらね…。」

『そういうことかぁ!』

書庫についての考察が捗る。

マンタが連結したような生物が起動装置を背中に乗せてやってくる。
毎回見て思うが、不思議な存在だ。
書庫には、まだまだ隠された秘密があるのだろう。
いずれ全てを解明できる時はくるのだろうかとsirutoは漠然と考えた。

巨大な生物の骨の上の光の子以外にここのエリアに用事はないので、irisのためにもさっさと上へ上がる。
このエリアの終着点はすぐそこだ。
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